「アイデンティティー失う」=ラトビアのロシア系住民に危機感―ウクライナ侵攻で分断
旧ソ連から独立したバルト3国の一つのラトビアは、約190万人の人口の4分の1をロシア系が占める。ロシアのウクライナ侵攻を受け、ラトビア政府はロシア語の使用規制を強化しており、「ロシア系ラトビア人としてのアイデンティティー」を失うことに危機感を抱くロシア系住民もいる。
ベラルーシとリトアニアの国境に近いラトビア南東部ダウガフピルスはロシア系住民が5割近く、ロシア語を話す住民はさらに多い。町にはソ連時代に建てられたという建築物が残り、ロシア語の地元紙ミリオンのスベトラーナ・ガルトワノワ編集長は「欧州で最もロシアらしい町」と形容する。
ウクライナ侵攻開始以降、ラトビアではソ連の対ナチス・ドイツ戦勝記念碑などが「ソ連占領の象徴」と見なされ、相次ぎ撤去された。地元メディアによると、学校の授業を2025年までに段階的にラトビア語で行うよう求める法律も成立。ロシア語に対する規制が強まっている。
以前は教師だったというダウガフピルスのアレクセイ・ワシリエフ副市長は「侵攻後、(ラトビア)政府からは学校でラトビア語を使うようにという指示が来た。(母国語がロシア語の)子供は授業が理解できず、知識レベルが下がった」と訴える。「私たちのアイデンティティー、自分たちが使いたい言葉を使うこと、そしてロシアの文化。この三つを守りたい」と強調する。
一方、ウクライナ侵攻については、ワシリエフ氏は戦争を支持しないとしつつ、「戦争の原因や、いつからこの戦争が始まっていたか、誰がこの戦争を望んでいたかは分からない」とロシア批判を避けた。さらに、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に触れ、「ロシアだけでなく西側の罪もある」と主張した。
ダウガフピルス市内で住民を取材すると、物価上昇を受けた政府への不満の声が聞こえてくる。大学生アデリナ・カジミレノカさん(18)は「支援の対象はウクライナ難民ばかり。政府は自国民を忘れているようだ」と話す。
ガルトワノワ編集長は「こんな大変な状況は今までなかった。ロシアから来たものは何でもだめになっている」と不安を隠さない。第2次大戦時に米国で日系米国人が強制収容された歴史と重ね合わせ、ロシア系とそれ以外の市民との「分断」に危機感を募らせていた。
[時事通信社]
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