インド産ワイン最大手スーラの挑戦
【ナシクAFP=時事】人口14億人を擁するインドの巨大アルコール市場で、ワインの占める割合はわずか1%未満にすぎない。平均消費量は1人当たりスプーン数杯ほどしかなく、蒸留酒が人気を集めている。こうした中、ワイン市場に挑もうとしているのが、国内最大メーカー、スーラ・ビンヤーズだ。≪写真はインド西部ナシクにあるスーラ・ビンヤーズのワイナリー≫
インド市場の17%を占めるスーラ・ビンヤーズは昨年末、ムンバイ証券取引所とナショナル証券取引所に上場した。
スーラなど生産者は、都市部中間層の嗜好の変化に伴い、1980年代に中国で経済成長と共に起こったワインブームがインドでも起こると期待している。
スーラ・ビンヤーズの創業者、ラジーブ・サマント最高経営責任者(CEO)は「ワインの時代が来ている」と強調した。
スーラという名は、サマント氏の母親スラバにちなんでいる。
サマント氏は、インド経済の中心地、西部ムンバイ(旧ボンベイ)から約160キロに位置する古代都市ナシク出身。米カリフォルニア州のスタンフォード大学卒業後ナシクに戻り、家族が所有する土地でバラやマンゴーの栽培を始めた。
スーラが現在ある場所は、ヒョウやヘビが出る何もない草原だった。電気も電話も通っていなかったという。しかし、「この地には私を魅了する何かがあった」と語った。
インドは世界最大のブドウ生産国の一つで、ナシクも主要産地となっている。しかし、当時ブドウといえばワイン用ではなく、すべて果物として消費されるかレーズンに加工されていた。
サマント氏は、米カリフォルニア州のワイン産地、ナパバレーを訪れ、「おいしい、誇れるようなインド国産ワイン」を造ることを決めたという。
1996年に最初のブドウの木を植えた。その後、広大なリゾートも建設した。
スーラのあるナシクは今、インドのワイン都市との評判を得ている。
■風味は「インド風」
ムンバイに拠点を置くワイン・蒸留酒のコンサルタント企業ハッピーハイの創業者、アジット・バルギ氏は、高価格帯の国産ワインの品質は、世界のワインに肩を並べるようになったと指摘する。ただ、風味は「インド風」なままだという。
バルギ氏によると、インド産ワインはオーストラリアやフランス産と同じ味にはならないという。「赤道に近過ぎるため、ブドウが他よりも熟しているからだ」
インドのワイン消費量は、1995年はないに等しかった。女性の就業が拡大するとともに、女性の公の場での飲酒も許容されるようになり増加しているが、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によると、昨年の消費量は2000万リットルにとどまった。
バルギ氏は、ワイン産業拡大の最大の障壁はコストだと指摘する。
ワインは蒸留酒よりもアルコール度数がはるかに低いにもかかわらず、蒸留酒と同程度の税金を課している州も多い。
バルギ氏は「通常のインド産ワイン1本の価格は、ラム酒やウイスキーの通常サイズ1本と同じだ」「大衆には手が届かない価格のため、ワイン消費が伸びない」と述べた。
■ワインブームは起きない?
専門家は気候変動がブドウ栽培に与える影響や、貿易協定に基づくオーストラリア産ワインの輸入関税引き下げなどにより、国内生産者が期待するようなブームは起きにくいとの見解を示している。
インドではワインに150%の輸入関税がかけられているが、最大の輸入元となっているオーストラリア産については貿易協定により引き下げられることになった。
スーラは、外国産ワインとの競争激化に加え、気候変動がブドウの品質に与える影響を懸念している。
ムンバイに拠点を置く世界資源研究所のインド事務所で、気候計画のマネジャーを務めるプルタ・バゼ氏によると、ナシクの農家は10年近く前に既に洪水や干ばつを報告していた。
平均気温が上昇すると、ブドウの成熟が早まり、酸味が少なく糖度が高くなる。これにより、ワインのアルコール度数も上昇する。専門家は、こうした変化がワインの繊細な風味のバランスに影響するとみている。
バゼ氏は、気候変動に生産者が適応しなければ「チョコレートやワインを口にできる最後の日が訪れるかもしれない」と訴えた。【翻訳編集AFPBBNews】
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