2022-12-31 14:25政治

岸田首相、逆風克服か失速か=解散へ駆け引き、人事も焦点―23年政局展望

 岸田文雄首相が逆風を克服できるのか、あるいはさらに失速するか。2023年は、閣僚辞任ドミノで苦境が続く岸田政権の浮沈が懸かる分かれ道となる。5月に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、首相は地道に求心力回復を図る考え。衆院解散・総選挙をにらんだ与野党の駆け引きも活発化しそうだ。
 ◇重要課題「動かす年」
 「未来の世代に責任を持って日本を引き継ぐ」。首相は22年暮れ、内外情勢調査会で講演し、新年の抱負をこう語った。防衛力強化や「新しい資本主義」、少子化対策といった重要課題に「布石」を打ったとして、「実際に稼働させ、動かしていく。これが23年の位置付けだ」と力説した。
 とりわけ重視するのが、G7指導者を地元・広島に集めるサミット。だが、首相がこの「晴れ舞台」にたどり着くまでには数々の試練がある。
 最初の関門は、1月23日召集の通常国会だ。政府・与党は、過去最大の114兆3812億円に上る23年度予算案を提出し、年度内成立に全力を挙げる。「政治とカネ」の疑惑を抱えた秋葉賢也前復興相らを年の瀬に更迭した首相に対し、野党は任命責任を厳しく追及する方針。防衛費増額やそのための増税など首相が矢継ぎ早に決めた重要政策を主な論点に、与野党が冒頭から激突しそうだ。
 経済運営も成果が問われる。4月8日に任期が切れる黒田東彦日銀総裁の後任人事案を、政府は3月までに国会に提示する方針。異次元金融緩和を推し進めてきた黒田路線は修正されるのか。経済界も政界も首相の判断に目を凝らす。
 物価高の痛みを和らげる賃上げの動きを広げられるかも課題だ。春闘の結果は、首相が掲げる新しい資本主義の成否につながる。
 4月は統一地方選が行われるほか、欠員が生じた衆院千葉5区、和歌山1区、山口4区で補欠選挙も実施される見通し。自民党は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題の影響を懸念する。
 ◇「常在戦場」で選挙準備
 次期衆院選は小選挙区の「1票の格差」是正のため、定数を「10増10減」する新たな区割りで行われる。10月に衆院議員の任期満了まで残り2年の折り返しを迎えることから、与野党とも「常在戦場」(政権幹部)と身構える。
 解散権を握る首相は、自民党総裁の任期切れまで9月で残り1年となることを念頭に、総裁再選に向けた解散戦略を慎重に探る。解散の選択肢の一つと目されるのが広島サミット後だが、内閣支持率の低迷が続けば政治決戦はおぼつかない。
 首相は防衛費増額のための増税実施までに衆院選を行う考えも示している。増税の時期は、自民党内の反対派に配慮して「24年以降の適切な時期」と曖昧にしており、23年は増税を巡る党内対立が再燃する。首相が解散をちらつかせて反対派をけん制する可能性もある。
 内閣改造・党役員人事も、首相の局面打開のカードだ。党幹部は「夏に人事がある」との見方を示す。「ポスト岸田」に意欲を隠さない茂木敏充幹事長の処遇が焦点。首相と距離を置く菅義偉前首相の要職起用も再び取り沙汰されそうだ。国民民主党を連立政権に加える案もくすぶり続ける。
 ◇立・維の共闘は
 野党は巨大与党にどう対峙(たいじ)するのか。立憲民主党と日本維新の会は先の臨時国会での「成果」に味をしめ、共闘を継続する方針だが、憲法改正や安全保障政策など基本政策で溝が深く、一枚岩にはほど遠い。統一地方選では競合し、国政選挙でも「野党第1党」を競う敵同士だ。 

 
 ◇2023年の主な政治日程
 1月 4日 岸田文雄首相が年頭記者会見(三重県伊勢市)
   上中旬 首相が英仏伊米の各国訪問
   23日 通常国会召集
   25日 21年衆院選の「1票の格差」訴訟を巡る最高裁判決
 2月26日 自民党大会
 3月下旬? 23年度予算成立
 4月 1日 こども家庭庁発足
    8日 黒田東彦日銀総裁の任期満了
    9日 統一地方選前半戦
   23日 統一地方選後半戦
       衆院千葉5区、和歌山1区、山口4区補欠選挙?
 5月19日 広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット、21日まで)
 6月21日 通常国会会期末
 7月 8日 安倍晋三元首相死去から1年
 9月30日 首相の自民党総裁任期満了まで1年
10月30日 衆院議員任期満了まで2年
12月下旬  24年度予算案決定
[時事通信社]

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