2022-09-30 11:58World eye

ロシア「ワグネル」ならウクライナは「モーツァルト」 支援組織立ち上げ

【ドネツクAFP=時事】ロシアの侵攻を受けるウクライナで、米国の退役軍人らがボランティア組織「モーツァルト」を立ち上げた。救援物資を配布したり、軍事訓練を施したりして「命を救う」ことを目指している。誰でも知っている作曲家に由来する名称は、同じく有名な作曲家リヒャルト・ワーグナーにちなんだロシアの民間軍事会社「ワグネル」の向こうを張ったものだ。≪写真はウクライナ・ドネツク州で、支援組織「モーツァルト」が実施する訓練の様子≫
 モーツァルトは、人道支援や救護、戦闘任務に就くウクライナ人への訓練を行っている。メンバーいわく、作曲家の名前を冠していることを除けば、ワグネルとの共通点はない。
 米海兵隊員歴23年のスティーブさん(52)も、「ワグネルのように軍事作戦に従事することはない」と明言した。
 スティーブさんは、被災地などに食料を提供するNGO「ワールド・セントラル・キッチン」から届けられた食品を積み込んだ四輪駆動車のハンドルを握る。東部ドネツク州のウクライナ支配地域の村に送られる食料が、スティーブさんらが運用する3台の車に満載された。
 現地到着後、住民に配布される260個の包みが村中心部の劇場のステージに積み上げられた。「大した量には見えないと思う。われわれは小さな組織だから」とスティーブさん。ただ、モーツァルトはその機動力を生かし、「大きな組織が行かない」ような場所も活動範囲としている。
■対極の任務
 パンを受け取った60代のマクシムさんは、「人道支援にはとても助けられている」と語った。「わずかな年金に頼るしかなく、(戦時下の)今は生き抜くのが大変だ」
 積み荷を降ろして空になれば、今度は民間人を乗せて前線から離れた安全な地域に連れて行ける。モーツァルト内には10~25人で構成される小グループがあり、スティーブさんのグループは「子どもを含めた民間人やペットの退避」を支援可能だ。
 モーツァルトの任務は、ワグネルとは懸け離れているようだ。ロシアの実業家でウラジーミル・プーチン大統領と親しいエフゲニー・プリゴジン氏(61)は26日、ワグネルを創設したのは自分だと公表した。その活動はウクライナのほか、リビアやマリ、シリアなどで確認されている。
 モーツァルトはロシアのウクライナ侵攻開始後、元米軍司令官によって創設された。活動は寄付で支えられている。軍事訓練を提供しているとはいえ、元海兵隊予備役将校のアンディー・ベインさんによれば、「常識的な」内容にとどまる。
 訓練担当責任者のマーティン・ウェッテラウワーさんは「多くの兵士は武器を扱ったことがない。使い方を知らない人が武器を手にするのが非常に危険なのは言うまでもない」と話した。
■銃だ、ギターじゃない
 「敵はあそこにいるぞ。バン、バン、バン」。ドネツク州内で20人前後のウクライナ兵の能力を試していたモーツァルトの外国人教官は、前進する兵士たちに向かってこう叫んだ。兵士たちは素早く地面に伏せ、応戦の動きをシミュレーションした。
 訓練後、教官は兵士たちの動きを評価し、問題があれば修正させる。
 「何がそんなに難しい。要は、敵に向かってただ撃てばいいんだ」。ある教官は英語で叫んだ。通訳は「そんなふうに武器を持つな。ギターじゃないんだ」と兵士に助言した。
 訓練に参加したゲオルギーさん(32)は、技能が向上したと実感している。「戦闘経験があったとしても、このような訓練は有益だ。常に新しいことを学べる」と語った。
 ウェッテラウワーさんは、モーツァルトの訓練内容は「戦場で生き抜くための能力」の向上と「基礎的な訓練」が中心だと説明した。具体的には、防弾チョッキの正しい着用方法や塹壕(ざんごう)を掘って敵の砲撃から身を守る方法、救護方法などだ。
 「われわれの任務がこの戦争の結果に及ぼす戦略上の影響はごくわずかしかないことは承知している。それでも命を救うことにわれわれは取り組んでいる」【翻訳編集AFPBBNews】

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