2022-08-10 14:00World eye

内戦の傷伝える廃虚の村 スペイン

【ベルチテAFP=時事】スペインの多くの村がそうであるように、北部アラゴン州のベルチテも1936~39年の内戦で徹底的に破壊された。だが、今も内戦末期の姿をほぼとどめているのはこの村だけだ。≪写真はスペイン内戦時の廃虚のまま残るアラゴン州ベルチテの通り≫
 散乱するがれきの中に辛うじて立つ時計台、大聖堂に残る弾痕や迫撃砲の穴──。集団墓地で人骨を掘り起こしながら、考古学者のイグナシオ・ロレンソ氏は「男性、女性、子どもも見つかっています」と言う。
 「左派政党に投票したこと、あるいは組合に加入していたことが罪とされました」
 ロレンソ氏のチームが発見した90人の遺骨の中には、手足を縛られたものや、拷問の痕が残るものもあった。
 生存者の証言によると内戦初期、フランシスコ・フランコ将軍が率いた国民戦線によるベルチテの弾圧では、約3000人の住民のうち350人が処刑された。
 「スペインのホロコースト」の著者で英国の歴史家ポール・プレストン氏は、前線から遠く離れた場所で殺されたスペイン人は約20万人で、うち15万人はフランコ軍の支配地域、残りは共和派地域で殺害されたと推測している。
 左派・社会労働党のペドロ・サンチェス首相は今年6月、「失踪者は今なお11万4000人」に上り、その大半が共和派だと述べた。サンチェス政権は内戦中の失踪者の遺骨発掘を「国家の責任」とする法案を提出し、7月に下院で可決された。
 内戦後にベルチテを訪れたフランコは、プロパガンダのために廃虚のまま保存するよう命じた。生き残った住民のための新しい村は、その隣につくられた。現在、廃虚はフェンスで囲まれ、ガイド付きツアーでしか訪れることができない。

■「世界でもここだけ」
 村の石畳の清掃と修復を行っている考古学チームにボランティアとして参加する米国人学生エリー・トーンクイストさんは「このように過去に起きたことをはっきりと思い起こさせる場所は、世界でもここだけだと思います」と言った。
 しかし、内戦は今もスペインを分断している。左派政党は犠牲となった共和派の人々の名誉を回復させたがっているが、右派は古傷を暴く行為だとして非難している。
 右派・国民党のベルチテ村長、カルメロ・ペレス氏は、内戦は「非常にデリケートな問題」だと認める。それでもこの村は「スペインでも唯一無二」であり、「尊厳を取り戻し」、平和な場を創造できる所だと語った。【翻訳編集AFPBBNews】

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