2022-08-03 13:49World eye

「歓迎されない」ロシア人観光客、ビザ発給制限で賛否 フィンランド

【ラッペーンランタAFP=時事】ロシアと国境を接するフィンランド南東部ヌイヤマーの国境検問所には、ロシア人観光客を乗せたバスがひっきりなしにやって来る。フィンランドの穏やかな夏を楽しむ予定を立てている人や、欧州の他の国々に向かったりする人もいる。≪写真はフィンランド・ラッペーンランタの港≫
 フィンランドは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて北大西洋条約機構(NATO)への加盟を目指しているが、ロシアに接する欧州連合(EU)加盟国では唯一、ロシア市民に観光ビザを発給している。
 ロシア第2の都市サンクトペテルブルク出身のボリス・スロフツェフさん(37)はAFPに、「ここには12年も旅行で来ている。自然や湖がある素晴らしい国だ」と語った。
 EUが領空にロシアの航空機の乗り入れを禁止して以降、フィンランドは欧州の他の国々に向かうロシア人にとって重要な経由地となった。ただ、こうした状況を歓迎していないフィンランド人も多い。ウクライナ人が残虐な侵攻に苦しむ中、ロシア人がフィンランドの夏を謳歌(おうか)する状況に憤っている。
 地元に住むキルシ・イルジンさんは「ロシア人がフィンランドに自由に旅行できるのは正しくない。制裁の原則を崩すことになる」と述べ、「何らかの制限があって当然だ」と訴えた。

■ビザ発給制限を検討
 穏健保守の野党、国民連合は今週、ウクライナとの連帯を示すため、ロシア人に対する新たな観光ビザの発給を停止するよう提案した。同党のユッカ・コプラ議員は「状況は耐えがたい」と述べた上で、「民間人や女性、子どもを含めてウクライナ国民が殺害されている一方で、ロシア人は欧州で余暇を過ごしている」と指摘した。
 議会では、ビザ発給制限の提案に対して超党派の支持があるようだ。サンナ・マリン首相が不在の際に代行を務める与党・社会民主党のアキ・リンデン議員は「個人的に、制限を拡大すべきだと思う」と語った。この案件は現在、外務省が検討中だという。
 リンデン議員は、「最大10万件に上る発給済みのビザが問題を複雑化させている」と話した。外務省はAFPに「現在、代替案を検討している」と明らかにした。
 欧州諸国間で出入国審査なしに国境を越えることを認めるシェンゲン協定に加盟し、ロシアと国境を接するエストニアやラトビア、リトアニア、ポーランドはロシア人に対するビザの発給を制限している。
 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は、ロシアはビザの制限に対して「極めて否定的に反応するだろう」と述べた。

■フィンランド行きのバスは満員
 ロシアが7月15日に新型コロナウイルスの感染対策として導入していた旅行の制限を撤廃して以降、フィンランドを目指すロシア人旅行者は着実に増えている。フィンランドは6月末、観光客に対する入国制限を撤廃した。
 7月の入国者数は18万5000人以上に上った。新型コロナの感染拡大前の水準には及ばないものの、6月の12万5000人からは増加した。地元メディアによると、フィンランドは7月、ロシア人に対して新たに1万件を超すビザを発給した。
 サンクトペテルブルクのバス運行会社は、フィンランド旅行の需要が拡大していると報告している。
 運行会社バルト・カーのセルゲイ・イワノフ氏は、「過去数週間は2日に1回の頻度で旅行を提供しているが、毎回満員だ」と語った。多くは、フィンランドから空路で別の目的地を目指すという。

■「ばかげたアイデア」と反発も
 多くのフィンランド人はウクライナとの連帯感を持っている。だが、フィンランドのロシア国境の街にとって、ロシア人観光客は重要な収入源だ。ラッペーンランタ市の多くの事業主は、ロシア人観光客が再び姿を消す可能性を懸念している。
 ロシア国境から数分のところにあるスーパーマーケットの経営者モハマド・ダルウィッチ氏はビザ発給制限について、「最もばかげたアイデアだ。普通のロシア人を孤立させて、何を得るというのか」「地元の人々や事業に大きな問題を引き起こしている」と訴えた。
 国境地帯に住む人々はこれまで、相互に密接な関係を保ってきた。しかし、新型コロナの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻で、劇的に変化した。
 スロフツェフさんは、フィンランド入国のための5年間有効のビザを所持し、年間最大10回はフィンランドを訪れているが、新たな制限が導入されれば、フィンランドに入国できなくなると懸念している。「そうなれば、とても悲しく残念だ。早く戦争が終結するよう望んでいる」【翻訳編集AFPBBNews】

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