「球磨川と共に」決意込め新銘柄=焼酎蔵元、被災乗り越え―熊本豪雨2年

災害関連死2人を含め67人が死亡、2人が行方不明となった熊本豪雨から2年となった4日、被災した球磨焼酎の蔵元「大和一酒造元」(熊本県人吉市)が新銘柄を発売した。氾濫水が運んできた酵母を仕込みに使い、社長の下田文仁さん(55)が「これからも球磨川と共に生きる」と決意を込めて「球磨川」と命名した。「命さえあれば何とかなる。当たり前のことの価値に気付かされた」。下田さんは被災後の日々を振り返った。
2年前のあの日、蔵は高さ約3メートルまで泥水に漬かり、下田さんは蔵が沈んでいく様子を自宅からぼうぜんと眺めるしかなかった。貯蔵タンクはひっくり返り、約4万リットルの原酒が流れた。「手の付けようがなく、再建できるとは思えなかった」と当時の心境を振り返る。
豪雨で蔵の周辺では4人が死亡し、下田さんの高校の友人も球磨村で犠牲になった。途方に暮れる下田さんの元に、蔵元を営む知人や友人らが駆け付け、泥のかき出しなどを手伝ってくれた。
復旧が進むにつれ「蔵を守り、支援を受けてきた恩に報いたい」と思うようになり、前向きな気持ちを取り戻すと「氾濫水は酵母も運んできたのではないか」とのアイデアが浮かんだ。
昨年12月、玄米で作ったこうじに、水と蒸した玄米を加え、タンクで自然発酵させた。通常は、購入した酵母を添加した上で温度管理などを行うが、「酵母がどんなものか分からないが、球磨川と一緒に造る」との思いから、被災した蔵に住み着いた酵母が働くのを待ち、手を加えなかった。
下田さんの挑戦は、腐敗によって終わる可能性もあったが、約7日後には発酵が始まった。「不安だったがほっとした」。もろみは、従来の製法になかった甘い香りがした。完成した焼酎は「球磨川の激しさより、優しい面が表現できた」と手応えを感じている。「もう濁った川は見たくない」との願いから、瓶は透き通った青色を選んだ。
自然発酵に委ねる製法は成功が保証されていないが、下田さんは今後も続けるという。「失敗しても受け入れる。球磨川と生きるとはそういうことだ」と覚悟を口にした。

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