基礎築いたクラマーさん=受け継がれる教え―日本サッカー、育ての親(上)
11月に開幕するサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、ドイツは日本にとって初戦で当たる難敵となるが、育成方法など影響を受けてきた国でもある。両国の関係の深さに迫った。
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日本サッカーの発展に大きく貢献した人物として欠かせないのが、ドイツ人の故デットマール・クラマーさん。1964年東京五輪に向け、日本協会がドイツ連盟にコーチの派遣を依頼し、60年から指導が始まった。日本に徹底的に基礎をたたき込んだ「日本サッカーの父」だ。
後にJリーグ初代チェアマンとなる川淵三郎さん(85)は、日本代表として60年に西ドイツ(当時)で初めてクラマーさんの指導を受けた。最初に命じられたのがサイドキックの練習。基本的な内容に反発する気持ちもあったそうだが、それまで日本には言語化された教え方がなく、「ちゃんとした説明で納得がいく。白紙に墨汁が染み込むように一気呵成(かせい)にうまくなった」。頭ごなしに選手を否定することもなく、「日頃の生活態度から、何から何まで心酔した」。合宿では同じ宿舎で生活した。
日本は、東京五輪で強豪アルゼンチンを破るなど8強入り。クラマーさんは離日の際、コーチ制度の導入やリーグ戦の開催など、五つの提言を残した。教えを受け継いだ長沼健監督、通訳を務めた岡野俊一郎コーチの下、68年メキシコ五輪で銅メダルを獲得。その後も教え子を通じ、サッカーの基本的な要素は日本中に広まり、現在に至る。
65年に日本サッカーリーグが開幕。93年にプロのJリーグとなり、98年には日本がついにワールドカップ(W杯)初出場を果たした。
クラマーさんとの出会いがなかったら、今の日本サッカーの姿はあったのか―。川淵さんは言う。「あと10年、20年、余計にかかったかもしれない。それほどの影響があった」。大舞台でドイツを破れば、これ以上ない恩返しとなる。「勝って『ドイツのおかげですよ』なんて言えたら最高」と期待した。
◇クラマーさんの五つの提言
(1)国際試合の経験を多く積む。
(2)高校から日本代表まで2人ずつコーチを置く。
(3)コーチ制度を確立する。
(4)リーグ戦を開催する。
(5)芝生のグラウンドを多くつくる。
◇クラマーさん年譜
1960年 日本代表の指導開始
64年 東京五輪で8強。指導を終えて離日
68年 日本、メキシコ五輪で銅メダル獲得
75年 バイエルン・ミュンヘンの監督就任
76年 欧州チャンピオンズカップ連覇
2005年 第1回日本サッカー殿堂入り
15年 90歳で死去
。
[時事通信社]
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