2022-05-23 14:12World eye

中国当局のデータベース流出、拘束されたウイグル人の詳細明らかに

【北京AFP=時事】中国当局の拘束下にあるイスラム教少数民族ウイグル人、1万人超の名簿が入ったデータベースが流出した。AFPが確認した名簿は、これまで知られていなかったものだった。≪写真はトルコ・イスタンブールでAFPの取材に応じるウイグル人のヌルシマングル・アブドゥレシドさん≫
 ヌルシマングル・アブドゥレシドさん(33)は、新疆ウイグル自治区での弾圧で行方不明になった家族の所在を知る手がかりをこの名簿から得た。
 研究者の推計によれば、テロ対策の名目で中国の秘密拘禁施設に収容されているウイグル人ら少数民族は100万人を超える。自治区内での弾圧や被害者に関する情報は、中国共産党により厳重に管理されている。拘束された人に連絡を取ることはできず、警察に問い合わせても回答はなく、裁判所の通知もごく一部しか公開されない。
 2015年からトルコ・イスタンブールに暮らすアブドゥレシドさんは、5年前に家族と連絡がつかなくなった。アンカラの中国大使館は2020年になりようやく、両親と弟メメティリさんがテロ関連の罪で獄中にあることを認めた。
 在外ウイグル人活動家が入手した中国警察の流出文書によると、メメティリさんは禁錮15年11月の判決を受け、自宅から600キロ離れたアクス地区の刑務所に収監されている。刑期は在トルコ中国大使館でも確認が取れた。
 「居場所が全く分からないより、ずっといい。小さな幸せがある」とアブドゥレシドさん。「ときどき、そこ(アクス)の天気を確認している。寒いのか、暖かいのか知りたくて」

■「息が詰まる」名簿
 流出した名簿には、新疆ウイグル自治区南西部のコナシェヘル県で収監されたウイグル人1万人以上が載っていた。その中にはアブドゥレシドさんの故郷の村人100人余りも含まれている。
 両親と、やはり拘束されたとみられる兄は、今もどこにいるのか分からない。
 名簿には見覚えのある村人7人の名前があった。いずれも小規模事業主や農場労働者で、テロとは無関係のはずだとアブドゥレシドさんは言う。「この名簿を検索していると、息が詰まる」

■恣意的に選別
 流出した名簿には、収監された人の名前、生年月日、民族、ID番号、罪状、住所、刑期、刑務所の詳細が記されている。AFPはデータベースの信ぴょう性を独自に検証できていないが、親族・知人が名簿に掲載されていたという在外ウイグル人5人に取材した。
 データベースを見ると、各町村で数百人が拘束されおり、一世帯だけで何人も拘束された事例も少なくない。
 英シェフィールド大学の講師で東アジア研究が専門のデービッド・トービン氏は、「対象を絞ったテロ取り締まりではない」と指摘する。「各戸をしらみつぶしに回って、大勢を連れ去っている。恣意(しい)的に選んだ共同体を標的とし、自治区全体に分散しているのは明らかだ」
 罪状は「社会秩序を乱す目的で集団を組織した」「過激主義を扇動した」「因縁をつけてトラブルを引き起こした」など、さまざまだ。
 政府統計によると、新疆ウイグル自治区の裁判所で判決を受けた人は、2014年には約2万1000人だったが、2018年には13万3000人以上に増加した。
 罪に問われなかったウイグル人の多くは、自治区各地の「再教育キャンプ」に送られた。中国政府が「職業訓練センター」と呼ぶこれらの施設では、強制労働、政治的洗脳、拷問、強制不妊手術が行われている証拠があると、外国政府や人権団体は指摘している。
 米国や西側の政治家は、中国政府のウイグル人に対する扱いを「ジェノサイド(集団殺害)」だと非難している。ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官は今月訪中し、新疆ウイグル自治区も訪れる予定だ。だが、中国の人権侵害の疑いに関する独立調査と呼ぶにはほど遠いだろうと活動家は警告する。

■すべての家で誰かが…
 2017年に中国政府がイスラム過激主義への取り締まりを強化する「厳打」キャンペーンを強化して以降、5年以上の実刑判決の割合は3倍近く増加した。非公開裁判が大半を占めている。
 ノルウェー在住のウイグル人活動家アブドゥエリ・アユプ氏は、流出した名簿で約30人の親族や近隣住民の名前を確認したとAFPに語った。
 「父の故郷のオグサクや母の故郷オパルでは、すべての家で誰かが拘束されたことが分かる」
 ほとんどは商人や読み書きのできない農民だという。「いとこは、ただの農民だ。『テロ』という単語を読むことも、意味を理解することもできないだろう」
 AFPは、警察のデータベースから流出したとされる別の名簿も確認した。主にカシュガル県とアクス県で2008~15年に拘束されたウイグル人1万8000人が特定されていた。
 中国政府は、新疆ウイグル自治区におけるウイグル人らイスラム教少数民族の迫害をかたくなに否定している。それどころか、ウイグル人への対応は過激主義に対する正当な対応だと主張し、貧困地域の経済再生に数十億ドルを投じたと反論している。
 流出した名簿についてのAFPの質問に対し中国外務省は、「新疆に関して一部組織や個人が捏造(ねつぞう)したうそに、われわれはすでに反論した」「新疆の社会は調和が取れ、安定している。あらゆる少数民族がさまざまな権利を十分に享受している」と回答した。【翻訳編集AFPBBNews】

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