闘う相手は貧困と性差別 ベトナム初の女子ボクシング世界チャンピオン
【ホーチミンAFP=時事】女子ボクサーのグエン・ティ・トゥ・ニ選手(25)は、貧困と性別に基づく偏見を相手に闘い、ベトナム初の世界チャンピオンとなった。≪写真はホーチミンの国立スポーツセンターで練習をするベトナム初の女子ボクシング世界チャンピオン、グエン・ティ・トゥ・ニ選手≫
昨年10月に行われたWBO女子世界ミニマム級タイトルマッチで、挑戦者のニ選手は王座防衛に臨んだ日本の多田悦子選手と対戦。予想を覆す勝利を収め、プロとしてわずか5試合目で世界王者の座に就いた。
ベトナムでは女性のスポーツ、とりわけ格闘技への参加は嘲笑されがちだ。そんな保守的な社会で、恵まれない境遇から立ち上がったニ選手の勝利は、画期的な偉業だった。
ボクシングを始めたのは、13歳の時だ。ホーチミンの貧困地区の小さな家に家族9人で住んでいたニ選手は、コーチに素質を見いだされ、トレーニングにすべてをささげると決心した。「もっとお金を稼ぎたかったので、一生懸命練習しました」と話す。
■偏見と闘う
ニ選手は自分の求めているものが分かっていた。家族を養う足しにするため必死に働いて1日数セントしか稼げない生活から抜け出すことだ。
「路上で宝くじ券を売ったり、飲食店で働いたり。家計の足しになることは何でもやりました」
対戦した多田選手は自分より身長も高く、プロとして20勝4敗3分けの記録を持つ経験豊富な王者だ。だが、ジャッジの判定は全員一致でニ選手の勝利だった。多田選手はもとより、ニ選手本人にも衝撃だった。
「勝ったことが信じられませんでした。チャンピオンベルトをベッドで横に置いて、一晩中眠れませんでした」
■岐路
共産主義と儒教の伝統が混在するベトナムではスポーツをする女性に対する偏見が根強く、ボクサーとしての道を歩むニ選手はばかにされてきた。
「近所の人たちはいつも祖母に、なぜ私に男の子みたいなボクシングをさせるのかと質問していました」とニ選手は言う。
「私が選んだ道が自分に合っていることを彼らに示すために、精いっぱいやってきました。私はボクシングへの情熱で、生活費を稼ぎました」
王座獲得から半年がたった今、ニ選手は岐路に立たされている。プロとして試合に出るか、アマチュア大会に出場するかだ。
ニ選手によると、WBOの王座は180日以内にタイトル防衛戦を行わないと剥奪されてしまう。だが、トルコで開催中の国際ボクシング協会(IBA)のアマチュア女子世界選手権に、すでにベトナム代表として出場を決めている。
ニ選手はWBOのチャンピオンベルトを失うことに未練はないと言う。
「今の目標はトルコでメダルを獲得することです。そして、アマチュアとプロ、どちらでもやれるのをみんなに示すことです」とニ選手は語った。【翻訳編集AFPBBNews】
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