2022-05-19 14:01World eye

砲弾降り注ぐ前線、退避拒む市民も ウクライナ東部

【リシチャンスクAFP=時事】ここが戦場だと分かっているのか──。ロシアの侵攻を受けるウクライナ東部の前線に位置するリシチャンスクで、警官のビクトル・レフチェンコさん(33)は、退避を拒否するアンジェリーナ・アバクモワさん(30)を前にしびれを切らした。≪写真はロシアの侵攻を受けるウクライナ東部リシチャンスクから退避する人々を助ける警察≫
 市内の建物には、ロシア軍が放った砲弾がまた降り注ぎ始めていた。
 軍服とヘルメットで身を固めたレフチェンコさんは、装甲トラックに乗りより安全な地域に退避するよう、2児を連れた母親のアバクモワさんの説得に努めていた。アバクモワさんは過去1か月、真っ暗な地下壕(ごう)で暮らしてきた。
 「子どもと一緒にいまだにこんなところで何をしているんだ」と、レフチェンコさんは大きな声で迫った。「ここが戦場だと分かっているのか」
 アバクモワさんは、無言でうなずきはしたものの、一歩も引かない様子だ。レフチェンコさんはアバクモワさんに厳しい目を向け、親子ともどもすぐに命を落としかねないと警告した。
 さらに、アバクモワさんが前線にとどまっていることは、ウクライナの戦争努力全体にも悪影響を与えていると言い募った。ウクライナ軍が市民防衛に力を振り向けねばならず、ロシア軍との戦闘に集中できなくなるからだ。
 ここまで言って、レフチェンコさんはこの日の説得を断念した。「あすまた来る。身の回りの品をまとめて準備を整えておくように。子どもたちを安全な場所に避難させなければならない」と憤然と言った。
 アバクモワさんは地下壕に戻りながら、「考えを変えるつもりはない」とささやいた。「今ここは危険だ。ただ、状況は変わる。今度は向こうが危険になる。行ったり来たりすることに何の意味があるというのか」

■「そううまくはいかない」
 ウクライナ東部の前線で暮らす市民の中には、際限なく続く砲撃の中で戦争の終わりを待つという困難な道を選ぼうとしている人々がいる。
 理由はさまざまだが、新たな生活を始めるための金銭的な問題や、住む家を永遠に失う不安を挙げる人が多い。ある男性は「避難して貯金を使い果たし、無一文で戻ってきた多くの人を見てきた」と話した。
 アバクモワさんとのやりとりを終えたばかりのレフチェンコさんは、いずれの理由にも納得できない。「皆、事態を完全には理解していないのだと思う。われわれはこうした人々の元へ、砲撃を避け、やっとの思いで会いに行き、食料を配り、避難するよう説得しなければならない」と話した。
 市内には地下通路や地下室が設けられた建物があり、数十人が身を隠して生活している。「ここにいる人々は全てうまくいくだろうと思っている。だが残念ながら、そううまくはいかない」と語気を強めた。
 包囲された市内に残る住民に食料を配布しているボランティアによれば、人口10万人だったリシチャンスクでは、今も2万人以上が暮らしている。【翻訳編集AFPBBNews】

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