プーチン氏に尽くす残虐部隊「カディロフツィ」 ウクライナでも活動
【AFP=時事】チェチェン人戦闘員が四方八方に銃を乱射し、ウクライナ兵の捕虜はうつろな目でひざまずき、あるいは遺体の間を引きずられていく──ロシア南部チェチェン共和国の独裁者ラムザン・カディロフ首長(45)は、自身の私兵がウクライナでロシアのために戦う様子をソーシャルメディアで自慢している。≪写真はチェチェン共和国のグロズヌイで開かれた集会で、ラムザン・カディロフ首長とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の写真を掲げる人≫
カディロフ氏の部隊「カディロフツィ」は、チェチェンの民兵組織だ。ウクライナの人々は、侵攻してきたロシア軍の中で、カディロフツィが最も残忍だと口をそろえる。
カディロフ氏は、チェチェン紛争でロシア側に寝返った元独立派指導者の息子で、ウラジーミル・プーチン大統領の忠実な配下として知られる。イスラム教徒が多数派のチェチェン共和国で、拷問や処刑など深刻な人権侵害を行っていると非難されてきた。
カディロフ氏はプーチン氏のウクライナ侵攻を歓迎し、直ちに部隊を送ると表明。ウクライナで戦うカディロフツィの動画を誇らしげにメッセージアプリのテレグラムに投稿し、ロシアの主張をなぞって「ウクライナのナチス(・ドイツ)」と戦っていると主張している。
先月には、ロシア軍が包囲するウクライナ南部の港湾都市マリウポリに入ったとして、約30人の戦闘員に囲まれた自身の写真を投稿した。また、ロシア兵を拷問したウクライナ兵を発見し、直々に「罰した」と主張した。
カディロフツィは、チェチェンのみならず2014年のウクライナ東部紛争やシリア内戦などでも悪名が高い。
ロシアの政治的暴力に詳しいカナダ・ラバル大学のオーレリー・カンパーナ氏は、「カディロフ部隊の参戦発表とそれをめぐるプロパガンダは、敵を不安定化させる試みの一環」だと指摘する。
■恐怖の種をまく
カンパーナ氏によれば「残酷さで知られるチェチェン部隊の参加は、ウクライナ人の恐怖心をあおる」。
侵攻直後、プーチン氏がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権を迅速に打倒するため、チェチェン人暗殺部隊を送り込んだといううわさが広まった。カディロフ氏も、ゼレンスキー氏は間もなく「前大統領」になると宣言した。
「ウクライナで何人のチェチェン人が戦っていて、どこに配備されているのか、正確なことは誰にも分からない」と、ロシアの政治専門家アレクセイ・マラシェンコ氏はAFPに語る。
カディロフ氏は先月中旬、ウクライナにいる配下は約1000人だと述べたが、真偽を確認するすべはない。カディロフ氏を支持しないチェチェン人はウクライナ政府側に付いてロシア軍と戦っている。
カディロフツィの残虐性については疑う余地もないが、戦果はまだ証明されていない。カディロフ氏は、配下の部隊がマリウポリ市庁舎を占拠したと勝ち誇ったように発表したが、その建物は市庁舎ではなかったことが後に公開された動画で明らかになった。
政治学者のコンスタンティン・カラチェフ氏は、「ウクライナでの作戦に加わることでカディロフ氏はプーチン氏への全面的な忠誠心を示し、影響力を維持しようとしている」と見ている。「カディロフ氏にとって、今回の作戦は個人的な宣伝になる」
■ロシア兵への懲罰
カディロフ氏は、プーチン氏に批判的だったロシアの野党指導者ボリス・ネムツォフ元第1副首相やジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ氏をはじめ、数々の要人暗殺の裏で糸を引いていたとされる。
2015年のネムツォフ氏暗殺事件の計画を練ったのは、マリウポリでカディロフツィを指揮し、3月下旬にウクライナ軍との戦闘中に負傷したルスラン・ゲレメエフ司令官だったとみられている。
ウクライナでのカディロフツィについて、複数の有識者は、2014年の東部紛争で親ロシア派に対して行ったように、ロシア兵を規律に従わせる役割も担っている可能性があると指摘する。カンパーナ氏は「カディロツィの経験はウクライナ各地の抵抗を圧倒するだけでなく、ロシア軍と親ロシア派に対する懲罰として機能し得る」と記している。
実際、ロシア軍内にもカディロフツィの味方は少ない。「だが、プーチン氏は全面的に信頼している」「カディロフ氏個人にとって、ウクライナでの軍事作戦への参加は成功と言える」とマラシェンコ氏は述べた。【翻訳編集AFPBBNews】
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