避難先に居場所ない…案内板にない列車で帰国するウクライナ難民
【AFP=時事】ウクライナ西部の都市リビウの駅は、戦火を逃れて出国しようとする人々でごった返していた。だが、あるプラットホームだけは人けが少ない。ここに降り立っていたのは列車で帰国した人々だ。≪写真はウクライナのハリコフからポーランドへ避難したものの、リビウに戻ってきたスビトラーナ・ナタルカさん(左≫とガリーナ・カヌカさん)
ウクライナ難民は欧州諸国の歓迎に感謝しているが、外国での新しい暮らしの見通しが立たず、帰国する人も少なくない。
スビトラーナ・ナタルカさん(60)は、娘のガリーナ・カヌカさん(28)と孫息子2人とウクライナ北東部の第2の都市ハリコフの自宅を離れて隣国ポーランドに逃れたが、5日後には家族でリビウに戻ってきた。
カヌカさんは、ポーランドでは「ボランティアの人たちが本当によくしてくれた」と、吹きさらしのホームで荷物の山に身を寄せながら話した。だが、根無し草の生活を送ることになると思うと、耐えられなくなったという。息子の病気の治療と言葉の壁を考えると、帰国を選ばざるを得なかった。
■「ウクライナに帰った方がまし」
国連によると、ロシアによる2月24日の侵攻開始以来、400万人以上がウクライナから退避したとされるが、帰国を選択した人数については公式統計がない。
AFP取材班は先月、ポーランドのプシェミシルからリビウに向かう3本の列車を目にした。それぞれに100人から250人が乗車していた。
乗客は三つのグループに分けられる。ウクライナ政府による軍事支援の呼び掛けに応じようとする外国人有志。支援物資を運ぶ人。そして大半を占めるのが、ウクライナの藍色のパスポートを持つ女性と子どもだ。
車掌の一人は、ウクライナに帰国する列車に300人ほど乗り込むこともあると語る。これは出国する列車の約3分の1の乗客数だ。「最初はそんなことはなかった」が「女性や子どもが多くなった」と言い、「ホームレス状態で2、3日過ごし、ウクライナに帰った方がましだと言った女性もいた」と続けた。
■心休まる故郷
ポーランドのプシェミシル駅の案内板にリビウ行きの列車は表示されていない。乗りたい場合は難民の流れに逆らって歩き、「立ち入り禁止」と書かれたドアの向こうで入国審査を受けなければならない。
列車はわずかな人々を乗せ、ポーランド当局のヘリコプターが上空を巡視飛行する中、渋滞する道路を横目に90キロ離れたリビウに向かって走り始める。
さび付いた鉄条網のフェンスを越えると、そこは再び戦場だ。片田舎の所々にウクライナ国旗を掲げた検問所が見える。
反対方向に向かって走る満員列車とすれ違い、やがてリビウに到着する。検問所がいくつも並び、建物の窓辺には土のうが積まれ、夜間は空襲警報が鳴り響く。紛れもなく、戦時下の国だ。
それでもナタルカさん一家にとってリビウは、わずかではあるが心休まる新たな故郷となる。【翻訳編集AFPBBNews】
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