廃品リサイクルで紡ぐ音 スペイン・スラム街のオーケストラ
【マドリードAFP=時事】スペインの首都マドリードのスラム街で育った少数民族ロマのクリスティナ・バスケスさん(18)は、自分がバイオリンを弾くようになるとは想像もしなかった。≪写真はバイオリンを手にする「リサイクル音楽」プロジェクトの合奏団のクリスティナ・バスケスさん。スペイン・マドリードで≫
彼女は今、オーケストラで第1バイオリンの首席奏者を務めている。社会から疎外される恐れのある若者二十数人が集まり、リサイクル材料で作った楽器を奏でる独創的な楽団だ。
バイオリンの材料は、色とりどりのジュースの空き缶。本体がスケートボードでできたコントラバスや、プラスチック製の容器でできたドラムもある。
「リサイクル音楽」と呼ばれるこのプロジェクトは、廃棄されたごみに新しい命を吹き込むだけでなく、厳しい境遇にある若者に恩恵をもたらしている。「私の人生を大きく変えてくれました。本当にうれしい」とバスケスさんは目を輝かせた。
マドリードの最貧困地区の一つ、市南部のバジェカスにある学校に通っていたバスケスさんは12歳の時、カリキュラムの一部だったオーケストラにためらいながら入団した。
今では、年下の団員を指導している。「若い女の子がやって来て『大人になったら、あなたみたいになりたい』なんて言われると、誇りでいっぱいになります」
■音楽が「生き方になる」
ルイス・ミゲル・ムニョスさん(18)は、退学率が高いバジェカスのような地区で学校を辞めずに道を歩めているのは、オーケストラのおかげだと語った。
「仲間と遊ぶ代わりに、音楽を聴き、演奏することを選びました。少しずつ、それが生き方になりました」
脱色したブロンドの髪にあごひげを生やしたムニョスさんは、オーケストラに所属するのは「家族と一緒に、一番好きなことをしているような気分です」と言う。音楽のおかげで「人生の問題から逃れられました」。将来の夢はプロのフラメンコ打楽器奏者になることだ。
スペインの環境団体「エコエンベス」が運営するこのプロジェクトのヒントとなったのは、南米パラグアイのカテウラ楽団だ。この楽団ではスラム出身のミュージシャンたちが、ごみ集積場で見つけた材料で作った楽器を演奏している。
カテウラ楽団は2014年、エコエンベスに招待され、マドリードで演奏した。「リサイクル音楽」プロジェクトのビクトル・ヒル代表はその時、「ここでもできないだろうか。社会的、経済的な問題はより切実だ」と思った。同年、エコエンベスは同様の合奏団を自前で創設することを決めた。
■音楽人生の足掛かりに
創設からわずか4か月後、合奏団は初コンサートを開いた。「あの子たちは音符を4個以上続けて演奏できなかった」と振り返るアルゼンチン出身のヒル氏。自らはスケートボードで作ったコントラバスを演奏する。
合奏団はスペイン各地の都市で演奏経験を積み、「すでに4人の男子団員が音楽学校や公立音楽院で奨学生として学んでいる」という。
楽器は親子3代続く弦楽器職人のフェルナンド・ソレールさんが、缶、木箱、フォークやスプーン、廃棄された楽器などを材料に製作している。
リサイクル楽器はできる限り「本物」に近い形に作るとソレールさんは言う。子どもたちが将来、正規の楽器でも演奏を続けられるようにだ。【翻訳編集AFPBBNews】
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