2022-01-13 12:19World eye

北朝鮮・金正恩氏の10年:米朝会談3回、親族の犠牲2人と核開発

【ソウルAFP=時事】若くして北朝鮮の最高権力を継承してから10年。金正恩(キム・ジョンウン)氏は今や、世界的にも経験豊富な指導者の一人だ。そしてこれからの数十年、核兵器を盾に欧米諸国に挑発的な態度を取り続けるはずだと専門家はみている。≪写真は資料写真≫
 まだ30代後半の金氏は昨年1月、朝鮮労働党の総書記に就任した。ほとんどの国家元首とは異なり、選挙や任期、年齢の心配はない。健康が許す限り数十年にわたって君臨していくと思われる。
 金氏の最初の10年は、国際的な孤立に始まり核開発へ、そして世界で最も影響力を持つ指導者らと共に外交の舞台に立つまでに至る軌跡を描いているとアナリストは言う。
 「北朝鮮は米国との対立的な立場を崩さず、挑発的な駆け引きを仕掛けて米国を悩ませるだろう」とAFPに語るのは韓国の政府系シンクタンク、韓国統一研究院の北朝鮮問題専門家、金●何(●はかねへんに眞、キム・ジンハ)氏だ。「それでも、一線を越えて両国の関係が完全に決裂することがないように気を付けるはずだ」
 金氏は、2011年12月17日に死去した父、金正日(キム・ジョンイル)総書記の実権を継承した。その後6年以上は、世界から孤立している自国を離れることも、外国の元首と会談することもなかった。

■粛清と暗殺
 当初は金氏を、朝鮮人民軍の将軍や労働党幹部が操る名ばかりの元首とみる向きもあった。しかし、2013年に義理の叔父、張成沢(チャン・ソンテク)氏を反逆罪で処刑するなど、残忍な方法で自らの権威を確立した。
 2017年にはマレーシア・クアラルンプールの空港で、異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏が神経剤で暗殺され、これについても金氏の関与が疑われている。

■核兵器開発
 その間、金氏は国連安保理決議で禁止された核兵器開発を加速させた。北朝鮮による6回の核実験のうち、4回は金氏の政権下で行われた。2017年には米本土が射程に入る弾道ミサイルの発射テストを何度も実施。国連安保理の制裁強化に対抗した。
 年初に米大統領に就任したドナルド・トランプ氏と数か月にわたって激しい舌戦を繰り広げ、朝鮮半島での武力衝突の不安が高まった。その後、金氏は自国の核戦力が「完成した」と世界に宣言した。

■「ロケットマン」とトランプ氏の「恋」
 2018年、ハト派とされる韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領の仲介で、金正恩氏は北朝鮮の最高指導者として初めて米国の現職大統領と会見。シンガポールで開かれた米朝首脳会談は世界の注目を集めた。
 米シンクタンク、ランド研究所のアナリスト、スー・キム氏は、この会談を実現させた大きな要因は北朝鮮の核保有の威力だと指摘している。
 たった一度の会談で、小太りの若い指導者は、リアリティー番組の司会で名をはせて大統領になった約40歳年上の米国人実業家の心をつかんだ。
 トランプ氏は、自らがかつて「小さなロケットマン」とあざ笑った人物と「特別な絆」を築き、「恋に落ちた」とまで述べた。
 同年、金氏は文氏と森を散策しながら懇談し、北朝鮮にとって最大の支援国である中国の習近平国家主席とも数度会談した。
 「どういう結果につながるのか、興味をかき立てられた」と、米タフツ大学の李晟允(イ・ソンユン)教授は語る。「残忍で、奇妙な格好をした独裁者が、改革志向で平和を希求する、核兵器と強制収容所の責任者に変身した。非核化を受け入れるものと思われた」
 だが、友好ムードは長く続かなかった。ベトナム・ハノイで開かれた第2回米朝首脳会談は、国連の制裁解除とそれに対する北朝鮮側の譲歩をめぐり決裂した。
 2019年に追加会談が朝鮮半島を分断する非武装地帯(DMZ)で行われたが、局面打開には至らなかった。

■「フレネミー」中国との「共通の敵」は米国
 中国と長期的な緊張状態にある米国に対して、金氏は、祖父であり、北朝鮮を建国した金日成(キム・イルソン)国家主席を手本にできるだろう。
 金日成氏は、冷戦時代の旧ソ連(現ロシア)と中国の緊張関係を利用し、この二大共産主義国が争うよう仕向けた。
 北朝鮮と中国は朝鮮戦争で共に、韓国および米国主導の国連軍を相手に戦い、休戦に持ち込んだ。それ以来、北朝鮮と中国のつながりは友であり、敵でもある「フレネミー(フレンドとエネミーの造語)の愛憎関係」だとタフツ大の李教授は言う。
 「どちらも相手を好んではいない。それでも、戦略、イデオロギー、歴史の面でも、そして米国を共通の敵として抑え込む上でも、互いを緊密な同盟国だと認識している」

■「かなりの成果」
 隣の中国を見ていれば、右肩上がりの経済成長がずっと続くと一党独裁が支持されることを金氏も学ぶはずだが、北朝鮮は兵器やミサイルは獲得する一方で、この数十年、国家主導の経済運営に失敗してきた。これは国連制裁が発動される以前からのことで、中国も不満を抱いている。結果、北朝鮮国民は慢性的な食糧不足に苦しんでいる。
 医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮は、中国で新型コロナウイルスが発生すると、昨年国境を封鎖した。
 北朝鮮は今なお感染者はゼロだと主張しているが、金氏は食糧事情が「緊迫している」ことを認め、「史上最悪の事態」に備えるよう国民に呼び掛けている。
 「経済的には、北朝鮮は世界ランキングで最底辺にいる」と韓国・梨花女子大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授(北朝鮮学)は指摘する。
 「しかし核兵器のおかげで、世界の二つの大国、米国と中国の間で影響力を行使することができる」と朴氏は付け加えた。「これは北朝鮮にとって、かなりの成果ではないか」【翻訳編集AFPBBNews】

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