2021-12-06 13:05World eye

恩恵受けた湖を汚染から救いたい 闘いに一生ささげる中国の活動家

【昆明AFP=時事】環境活動家の張正祥氏(74)は、目がよく見えず、困窮した生活を送っている。だが、中国で最も汚染されている湖の一つ、●池(てんち、テン池〈●はさんずいに眞〉)周辺の多数の企業と対決し、汚水を垂れ流す工場を閉鎖に追い込んできた。≪写真は中国南西部・雲南省昆明にあるテン池で双眼鏡で湖の様子をチェックする環境活動家の張正祥氏≫
 テン池は、雲南省の省都、昆明西南に位置する国内最大級の淡水湖だ。張氏は、この広大な湖の保護活動に人生を費やし、周辺地域の企業に環境汚染防止を促す一方で、廃水を湖に流す企業を当局に告発してきた。
 「子どもの頃は湖の底まで見えていました。喉が渇けば湖の水を飲み、水を料理にも使いました」と張氏は振り返る。
 「その水が有毒になりました。飲めないし、使えない。触ることさえできません」
 張氏の活動はリスクを伴う。中国では、草の根の社会運動は政府によって弾圧される。環境活動家やその弁護士が報復を受け、時には収監されることもあった。
 週に数回、張氏は赤土の岸辺をパトロールする。汚染源がないか双眼鏡でチェックし、小型のコンパクトカメラで写真も撮る。
 テン池には農業、工業、鉱業の汚水や人の排せつ物が何十年も流され、環境破壊が起きている。
 中国政府はテン池を保護するために500億元(約9000億円)以上をつぎ込み、水処理施設を多数設置し、川を引き込んで新鮮な水を供給してきた。
 それでも、湖面は今も濁り、緑藻類で覆われている。

■「湖を守るのは自分の務め」
 張氏は湖畔の村で生まれ、テン池で取れた魚と周囲の森の果実を食べながら、ずっと湖の恩恵を受けて生きてきた。
 5歳の時、父親が亡くなり、その後間もなく母親が家を出た。残された張氏と2人の弟たちは自力で生きなければならなかった。
 弟たちは、中国の大飢饉(ききん)時代に亡くなった。張氏は天涯孤独となり、自然の中で暮らし始めた。生き延びるために自然の食料を手に入れるすべを身に付けた。
 「この湖は生きています。でも、この問題で自ら声を上げることはできません。湖を守るのが私の務めです」とAFPに語った。「(湖は)私にとって2人目の母なのです」

■張り子のトラと鉄のトラ
 中国が経済発展を続ける中、張氏は、資源を乱用し、無許可で事業を行って環境を汚染する企業を糾弾し始めた。賛同を得られず、苦労することも多かった。
 自治体は、地元の環境を守ることには消極的だったと張氏は言う。
 「なぜかというと、地元の企業と癒着していたからです」
 張氏の湖畔の自宅には、自身の活動に関する書類や報告書が床から天井まで積み上げられている。
 張氏によれば、閉鎖まで持ち込んだ工場は200以上に上る。だが、ただでは済まなかった。
 地元の企業幹部から鉱山・採石場の所有者まで、「その多くに張さんは憎まれています」と周光文氏(68)は話す。自身の採石場は張氏の告発を受けて20年前に閉鎖され、投資した資金もすべて失うことになったが、現在は張氏の環境保護活動に理解を示し、親しい間柄になった。
 2002年、張氏は未登録のトラックにはねられて片腕を骨折し、視力がかなり低下した。違法の採石場に関する証拠を集めていた最中だった。
 張氏は故意の事故だったと信じている。襲撃されたのは一度や二度ではない。
 「殴られ、痛めつけられ、自宅を壊され、畑も奪われました」とAFPに語った。
 「怖くはありません。連中は張り子のトラ。私は鉄のトラです」
 張氏は、2009年に中国国営テレビの「感動中国」という番組で「真の環境大使」として表彰された。今は、やっと人に話を聞いてもらえるようになったと話す。
 「2000年代半ばから、中国の水質汚染問題は転機を迎えている」と環境問題専門家の馬軍氏は言う。
 20年ほど前は、水質が最低等級を下回っているという報告が全国の水質観測所の4分の1から上がっていた。馬氏によれば、その頃からの連携した取り組みが功を奏し、2020年は最低等級以下の水質報告は1%に満たなかった。
 しかし、400キロ離れた長江からテン池に水を引き込む計画の達成には何年もかかる。生態環境省の今年の報告によると、処理場はあるが、いまだに年間1億4000万立方メートルの汚水がテン池に流れ込んでいる。
 張氏は闘いをやめるつもりはない。
 「引き返すことはできません」と張氏は言う。「私は1本の丸木橋の上を歩いています。死ぬまでこの道を歩き続けます」【翻訳編集AFPBBNews】

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