コロナ後の嗅覚障害と闘う患者と医師 スペイン
【AFP=時事】スペイン第2の都市バルセロナの病院で、医師が女性患者の鼻に試験管を近づけ、どんなにおいがするか尋ねる。患者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかったのは1年半前だ。≪写真は嗅覚障害のリハビリを行うクリスティーナ・バルディビアさん≫
「蜂蜜、バニラ、チョコレート、それともシナモンですか?」。「バニラでしょうか」とエンカルナ・オビエドさん(66)は答えるが、自信なさげだ。
スペインではコロナ感染後に推定50万人が嗅覚を失っている。オビエドさんはその一人だ。
昨年3月、彼女はコロナに感染したものの軽症だった。スペイン全土に感染が広がり、欧州でも最悪の流行国に数えられていた頃だ。
ここは市の北西部にあるムトゥア・タラサ病院の嗅覚専門外来。医師は「嗅覚トレーニング」を通じて、嗅覚の回復を図っている。数か月にわたって、さまざまなにおいを患者に嗅がせ、脳を再訓練してにおいを識別させる。時間のかかるプロセスだ。
市内の病院オスピタルクリニックで嗅覚診療を率いるジョアキン・ムヨル医師は「新型コロナウイルスに感染した患者の約70%が、嗅覚を喪失します」と語る。そのさらに4分の1は、長期間にわたって嗅覚が完全に回復しないままだという。
■「すべて焦げ臭い」
2月に開設されたムトゥア・タラサ病院の嗅覚外来でこれまでに治療を受けた約90人の大半は、オビエドさん同様、いわゆる「ロング・コビッド」と呼ばれるコロナの長期後遺症の患者だ。
初診後、4か月間のリハビリプログラムが始まる。週1回、療法士の指導の下でにおいを嗅ぎ分けるトレーニングも行う。オビエドさんはすでにこのプログラムは終えているが、現在も定期的に診察を受け、症状の改善状態を確かめている。
しかし今のところ変化はない。「前みたいに、うちに帰って来た時に、ああ、わが家のにおいだと言えるようになりたいです」。今は自分の体臭も分からないので、以前より頻繁にシャワーを浴びるようになった。
嗅覚が戻っても、異常が続く人たちもいる。
「何を嗅いでも、焦げ臭いと感じるようになりました。まるで揚げ物の鍋の上に鼻があるみたいです」と語るクリスティーナ・バルディビアさん(47)。去年3月にコロナに感染し、3か月間、完全に嗅覚を失っていた。
思い悩み、専門家に何度も相談した末、オスピタルクリニックへ行くと、本来と異なるにおいを感じる嗅覚障害の刺激性異臭症(パロスミア)と診断された。コロナ回復後の患者によく下される診断だ。
■うつ症状や体重減少も
バルディビアさんは1日に2回、さまざまなにおいが詰めてある6種類の容器に鼻を押し付ける。嗅覚系の神経回路を再生させる試みだ。
かんきつ系果実などのにおいは分かるようになってきたが、それ以外はまだだ。「コーヒーはひどいです。ガソリンと腐ったものが混じり合ったみたいなにおいがします」
嗅覚が正常に機能しない日常生活は、他人が想像する以上につらいと患者たちは訴える。
バルディビアさんにとって息子のにおいは恋しいが、他の人たちのにおいは不快に感じる。「義理の母や自分の母親をハグすると、ひどいにおいがします。(中略)こんな状態と向き合うのは大変です」
ムヨル医師によると、嗅覚異常が引き金となってうつ状態になるか、体重が減少する患者もいる。
「私たちは、嗅覚によって自分が食べる物や飲む物のにおいを嗅ぎ、外界とつながっていられます」とムヨル医師は言う。「ガスや腐った食品といった危険な物を感知できるのも、そのおかげです。嗅覚がなくなると、世界から切り離されてしまいます」【翻訳編集AFPBBNews】
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