地熱利用で石炭廃坑がグリーン革命の拠点に 英国
【シーハムAFP=時事】英イングランド北東部にあるドードン炭鉱は30年前に廃坑となった。ところが今、思いもよらぬグリーンエネルギー革命の舞台としてよみがえっている。≪写真は炭坑労働者を描いたコスモ・サーソン氏による壁画。英イングランド北東部シーハムで≫
風にさらされた沿岸部の町シーハムに近いこの鉱山は、1991年に閉鎖されるまで地中深くから石炭を掘り出す、炭素集約度の高い炭鉱だった。
一部は海抜0メートル以下にあるため、ドードンは廃坑以降ずっと水浸しになっているが、その水は地熱で温まっている。
地元当局はこの地熱に注目し、無尽蔵にある有益なグリーンエネルギー源を活用する新たな宅地開発計画を進めている。
ダラムの自治体議会で気候問題を担当するマーク・ウィルクス議員は、「熱は基本的に地中から発生しています」と語る。
鉱山深部の水は、地下で約20度まで温まっている。
かつて数千人の作業員がひしめいていた鉱山の入り口では今、処理プラントの大きなパイプが温水を吸い上げている。その量は2秒ごとにバスタブ一杯分。この温水を利用して、ヒートポンプ回路内の水を55度から60度になるまで温める。
ここで発生した熱は、いずれ地域のコミュニティーに供給される。一方、強酸性で鉄を含む排水は、地元のビーチや給水設備を汚染しないよう処理してから海へ放出する。
■石炭利用の産業革命からグリーンエネルギー革命へ
「産業革命から受け継いだもの(炭鉱)を、グリーン革命に利用しているわけです」とウィルクス氏はAFPに語る。
これまで、温水の熱はこのポンプ施設の暖房にのみ利用されてきた。しかし2年後には近隣に1500戸からなる新しい住宅地が開発される計画で、そこでの熱供給はすべてこの施設によって賄われる。
「これは無尽蔵のエネルギー源です。水は絶え間なく出てきます」とウィルクス氏は言う。「技術コストはかかりますが、うまくいけば将来的には抑えることができるでしょう」
このような大規模地熱プロジェクトの取り組みは、英国では初となる。ウィルクス氏は近隣の事業所などにも熱を供給したいと考えている。
英国での発電は、天然ガスに大きく頼っている。しかし、ボリス・ジョンソン英首相は、2035年までにエネルギー生産のすべてを再生可能エネルギーに移行し、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年までに達成させる考えを示している。英国は議長国として、10月31日からグラスゴーで始まる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に臨む。
10月上旬、天然ガス市場が史上最高値をつけたことも、地熱利用の緊急性を際立たせた。価格高騰に火をつけたのは、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)解除後の経済再開と、北半球の冬の需要増に対する懸念だった。
■電気の低炭素化
古い炭鉱を管理する非省庁型公共機関の石炭機構「コールオーソリティー」で、鉱山エネルギーを担当するシャーロット・アダムズ氏は、「ヒートポンプも電気は必要」と述べる。
「つまり、カーボンニュートラルではない。それでもエネルギー効率はいい」とし、「想像がつくように、電力供給における脱炭素化に伴い、発電時のCO2排出量は減少しています。つまり徐々にですが、低炭素化が進んでいます」と付け加えた。
同氏はまた、地熱利用のプロセスでは、100%電気の暖房システムと比べて4倍ほどエネルギー効率がいいことにも触れた。
ドードンのグリーンプロジェクトは1200万~1500万ポンド(約19億~約23億4000万円)かかる。政府やプラントの未来の運営会社などが出資する。【翻訳編集AFPBBNews】
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