2021-10-21 12:29World eye

気候変動に脅かされる自然の宝庫 米フロリダのエバーグレーズ国立公園

【マイアミAFP=時事】ウンベルト・ヒメネスさんはワニが大好きだ。ワニにあだ名を付け、その滑稽な振る舞いを思い出しては笑みをこぼす。≪写真は米フロリダ州のエバーグレーズ国立公園の湿地帯を進むプロペラ船≫
 米フロリダ州のエバーグレーズ国立公園でプロペラ船を操るヒメネスさんは、「ここは素晴らしい場所です。世界に二つとありません」と言う。
 だが、米国最大の湿地帯である同地は、気候変動による脅威にさらされており、世界最大規模の包括的な環境保護の取り組みが行われている。
 2000種以上の動植物が生息・生育する亜熱帯性の自然の宝庫だが、最大の脅威は海からやってきている。
 エバーグレーズ地域は、フロリダ州南部のその他の地域と同様、土地がほぼ平たんだ。つまり、同地域の生態系は、気温上昇がもたらす深刻な影響である海面上昇に対して、きわめて脆弱(ぜいじゃく)だ。
 塩水が淡水の湿地に流れ込むと、破壊的な影響を及ぼしかねない。
 フロリダ州の人口約2100万人のうち900万人が、同地域で貯水・浄化される水に依存している。
 地下の帯水層は、いったん海水が浸透すれば、破壊されかねない。加えて、海水は、エバーグレーズ地域の希少な動植物の多くの生息・生育地を破壊する危険がある。
 干ばつの深刻化や降水量の減少など、気候変動がもたらすその他の影響についても、懸念が高まっている。
 NGOのエバーグレーズ財団の科学担当主任のスティーブ・デービス氏は、「広大な泥炭地が長い時間をかけて有機質土を蓄積する中、この生態系が土中に大量の炭素を閉じ込めてきました。この土壌が生息地の形成に寄与するのです」と説明する。
 淡水が失われると、炭素の隔離ができなくなるだけでなく、土壌中に蓄えられていた炭素が大気中に放出される。二重の気候災害だ。

■水を元に戻す取り組み
 数千年の間、雨期にはエバーグレーズ地域の北部に雨水が蓄積した。水はこの地域の緩やかな斜面に沿って非常にゆっくりと動き、地形をつくってきた。
 だが、過去1世紀の間に、フロリダ南部の都市化と農業拡大のために、自然の水流が変えられた。150万エーカー(約6070平方キロ)の湿地帯の生態系が変化し、気候変動が進む中、一帯はダメージを受けた。
 米議会は2000年、この地域を保護するプロジェクトを承認した。費用はフロリダ州と連邦政府の折半だ。同地域は1976年に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が生物圏保存地域「エコパーク」に指定している。
 デービス氏によると、プロジェクトの目標は「貯水して浄水処理を行い、その水を最も自然な形で国立公園に戻すこと」だった。
 この目標達成のために、用水路や堤防、ダム、ポンプなどからなるシステムが考案された。また、水をろ過し、湿地帯に悪影響を与える栄養素を除去する人工湿地帯が設計された。同時に、水の流れをせき止めていた道路部分を高架にした。

■取り組みの遅れ
 復元の取り組みは、すでに成果を表し始めている。デービス氏はプロペラ船を下り、澄んだ水の中に両手を入れて底から黒い塊をすくい上げた。
 藻類、バクテリア、微生物が交じったもので、その存在は健全な水質であることを示している。
 ある程度の進展はあったが、2000年に策定された当初計画の主要プロジェクト68件のうち、これまでに完遂されたプロジェクトはわずか1件だ。
 遅れの主要な原因は、連邦政府からの資金不足だ。財団によると、プロジェクトにはこれまで、40億~50億ドル(約4600億~5700億円)が投入されたが、7割はフロリダ州からの支出で、連邦政府からの拠出は3割にとどまっている。
 気候変動に起因する緊急事態が、取り組みの追い風になる可能性はある。
 ジョー・バイデン米大統領は、エバーグレーズの復元活動のために2022年度予算に、前年比1億ドル(約110億円)増の3億5000万ドル(約400億円)を計上した。
 フロリダ州のロン・デサンティス知事はパームビーチ西郊に貯水池を建設する委託契約を米陸軍工兵隊と4月に結んだ。総工費は34億ドル(約3900億円)だ。【翻訳編集AFPBBNews】

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