2021-09-13 13:03World eye

セイロン紅茶の危機? スリランカ有機革命の波紋

【アハンガマAFP=時事】スリランカは、国内の農業をすべて有機生産とする世界初の国となることを目指しているが、その取り組みのあおりを受けているのが、主要産業である紅茶だ。生産量が激減すれば、低迷している経済に新たな打撃を与えかねないという懸念も生まれている。≪写真はスリランカ・ラトゥナプラの茶園≫
 ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は今年、化学肥料の輸入を禁止する方針を発表し、有機農業の推進を開始した。しかし茶園主は、10月にも生産が落ち込むと予想。シナモンやコショウ、さらにコメなどの主要産物の見通しも暗い。
 コロンボ南方160キロのアハンガマで世界有数の高級な紅茶を生産しているハーマン・グナラトナ氏(76)は、化学肥料の輸入禁止により「紅茶業界は大混乱に陥っている」とし、政府が方針を変えない限り、スリランカの紅茶の年間平均生産量は約3億キロから半減する恐れがあると語った。
 スリランカは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機の真っただ中にある。国内総生産(GDP)は昨年、3%以上縮小。政府はプラス成長への回復を期待しているが、その見通しも新たな感染の波の影響で危うい。
 紅茶はスリランカの主要な輸出品目で、同国の輸出収入の約10%を占め、年間12億5000万ドル(約1370億円)以上をもたらしている。
 グナラトナ氏が生産する「バージンホワイト」ティーはキロ当たり2000ドル(約22万円)の値が付く。同氏は、有機革命を主導するラジャパクサ大統領が起用した46人の専門家の一人だったが、先月、ラジャパクサ氏と意見が対立。大統領肝煎りの「グリーンな社会経済」を推進する作業部会から外された。
 グナラトナ氏は、スリランカ産のセイロン紅茶の化学物質含有量はあらゆる茶の中でも最低レベルで、害はないと主張する。

■「想像を絶するほどのコストがかかる夢」
 元スリランカ中央銀行副総裁で経済アナリストのW.A.ウィジェワルダナ氏は、政府が推し進める有機プロジェクトを「社会的にも政治的にも経済的にも、想像を絶するほどのコストがかかる夢」と評した。
 スリランカの食料安全保障は「損なわれ」、外貨がなければ「日に日に悪化する」と指摘した。
 茶園主からは、生産量が落ちれば収入が減るだけではなく、大量の失業者が出ると懸念する声が上がっている。茶葉は今でも人の手で摘み取られているからだ。
 「紅茶栽培がだめになれば、300万人が仕事にあぶれることになる」と、スリランカ紅茶工場オーナー協会は憂慮している。
 一方、ラメシュ・パティラナプランテーション相は、化学肥料の代わりに有機コンポストの設置を進める政府の方針を発表した。
 「肥料に関して、政府は、紅茶産業にとって有益なものを提供していく」とAFPに語った。
 農業従事者は、有機農業を推進すれば、スリランカのシナモンやコショウの輸出も影響を受けると訴えている。
 それでも、ラジャパクサ大統領は強気の姿勢を崩さない。最近の国連サミットでは、有機農業を普及する取り組みによって、スリランカ国民に「より良い食料安全保障と栄養供給」を確保できると発言した。
 さらに各国に対し、「世界の食料システムを持続可能な方法に変えるために必要な大胆な施策」を打ち出し、スリランカの後に続くよう呼び掛けた。【翻訳編集AFPBBNews】

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