2021-09-13 12:58World eye

ブドウ畑も高地に避難…温暖化で変わるスペインのワイン造り

【サントペレデリベスAFP=時事】スペイン地中海沿岸カタルーニャ地方で1世紀以上の歴史を持つワイン醸造家の一族。そのブドウ畑は、気候変動の影響でより気温の低い高地への移動を迫られている。≪写真はスペイン・バルセロナ近郊のサントペレデリベスにあるブドウ園で収穫されるブドウ≫
 ホアキン・ガイ・デ・モンテッラ・エスタニ氏が継いだワイナリーは現在、フランス国境に近いピレネー山脈の麓にもブドウ畑を持っている。標高は1200メートル近い。
 温暖化によりブドウの収穫期は早まり、耐暑性のある品種が求められている。高地移動は、適応を試みるスペインのワイン生産者らの選択肢の一つだ。
 カタルーニャの州都バルセロナから南へ約40キロ、海辺のパナデス地域にガイ・デ・モンテッラ氏が所有するエコロジー志向のワイナリー「トーレ・デル・ベグエール」がある。
 温暖化のせいで、収穫期はこの10年間で10~15日早まったとAFPに語った。「暑さが最も厳しい8月初めに収穫しなければなりません」
 そのため、2008年に生産拠点の一部をピレネー山中のボルビル村に移したと言う。

■早まるブドウの成熟
 国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の統計によると、スペインのワイン用ブドウ畑の面積は96万1000ヘクタールで、世界一だ。ワイン生産量では、イタリア、フランスに次いで第3位。
 スペイン気象庁によると、同国の平均気温は過去60年間に1.3度上昇した。ワイン造りはブドウを収穫するタイミングが極めて重要なため、ワイン生産者への影響は大きい。
 平均気温が上がるとブドウの成熟が早まる。実の酸度が下がり、糖度は上がる。香りや風味に関わる他の成分も変質してしまう上、ワインのアルコール濃度が増す。
 アルコール成分が過剰になるのを避けるためには、ブドウを早く摘まねばならない。「これではブドウが正しく完熟したとは言えません」。地元のロビラ・イ・ビルジリ大学のワイン醸造学専門家、フェルナンド・サモラ教授は言う。

■「ばかげている」
 スペイン有数のワインメーカー、ファミリア・トーレスは20年以上前から高地栽培を取り入れているが、当初は疑問視されていた。
 19世紀末創業のトーレス家のワイナリーは1998年、パナデス地域の拠点から北東160キロのトレンプでブドウ栽培を始めた。標高950メートルだ。ピレネー山脈を望むこの高地でワイン用のブドウが栽培されたことはそれまでなかった。
 「地元の農家は、ばかげている、ブドウが成熟しないと思っていました」と語る農園責任者のシャビエル・アドメジャ氏。「気候変動で、私たちが正しいことが証明されました」

■「新しい技術」で生き延びる
 ファミリア・トーレスのミゲル・A・トーレス社長によると、トレンプの気温は海抜ゼロの土地と比べてほぼ10度低い。この温度なら「酸度の非常に良い白ワイン」の原料となるブドウ品種の栽培が可能だと言う。
 世界150か国にワインを輸出している同社は、今ではほぼ消えてしまった品種の株を再生する研究所も持っている。高地に適した品種もすでにトレンプに植えてある。
 しかし、気候変動に適応するためには、かなりの資金が要る。「前途は険しい」と語るトーレス社長。ワイン業界はスペイン政府と欧州連合(EU)の両方に支援を要請していると言う。
 ガイ・デ・モンテッラ氏も同じく、スペインのワイン産業が生き残るためにはブドウの高地栽培を進め、さらに「成熟が遅い種を探す」必要があると言う。同氏はスペインの一部、特に南部がいずれワイン生産に適さなくなる可能性も否定しない。
 でも悲観論ばかりではない。「気候変動により、多くのワイナリーが背筋を正し、ワイン造りを学び直しています。先祖代々のやり方ではなく、新しい技術を求めながら」とサモラ教授は指摘する。「そのおかげで、数年前に比べてはるかに良いワインができています」【翻訳編集AFPBBNews】

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