2021-09-06 14:58World eye

「仕事は仕事」 アフガニスタンの元大臣、ドイツでピザ配達する日々

【ライプチヒAFP=時事】サイード・サダートさん(50)はかつてアフガニスタンの大臣だったが、政権内の腐敗に嫌気が差し辞職した。今、ドイツでフードデリバリーの自転車配達員として生計を立てている。≪写真はアフガニスタンの元通信・IT相サイード・サダートさん。ドイツ東部ライプチヒで≫
 平日は6時間、土日は正午から夜10時まで、サダートさんはオレンジ色の上着を着こみ、大きな四角い配達用バッグを背負って、ピザなど注文された料理を客に届ける。
 「この仕事を恥ずかしいとは全く思わない。仕事は仕事」とサダートさんはAFPに語った。「仕事があるということは、需要があるということ。誰かがやらなければ」
 ここ数年で多くのアフガン人がドイツに住み着いた。サダートさんは、東部のライプチヒに住んでいる。
 主に中東シリアやイラクでの戦乱を逃れた多くの難民が欧州に流入した2015年以来、21万人前後のアフガン人がドイツに亡命を求めてきた。結果、欧州最大の人口を有するドイツで亡命申請している外国人は、シリア人に次いでアフガン人が2番目に多い。
 8月にイスラム主義組織タリバンが再び国を支配すると、ドイツは4000人程度のアフガン人を退避させた。中には北大西洋条約機構(NATO)軍の協力者といった保護が必要な人々も含まれていた。

■「私的な利益」に走る政治家たち
 サダートさんのドイツへの移住には、これほどの緊迫感はなかった。
 サダートさんは2016年から18年までアフガニスタンの通信・IT相を務めていた。
 「大臣として働いていた時、大統領の取り巻きらと自分との間には、(考え方に)違いがあった」と言う。「彼らの要求は私的な利益のためで、私は政府のプロジェクトが適切に実施されるために資金が使われることを望んだ」
 要求が満たされない取り巻きらは、サダートさんに大統領側から圧力をかけようとしたという。
 それに我慢ならず辞職。その後、通信分野のコンサルタント職に就いた。
 しかし、2020年までには国内の治安が悪化し、「出国を決意した」と言う。
 アフガニスタンと英国の二重国籍を持つサダートさんは、2020年末にドイツへ移住することにした。英国が欧州連合(EU)を離脱すると、雇用が約束されているなどの条件を満たさない英国民がEU内の居住権を得られなくなるからだ。
 サダートさんは英国で職に就くこともできたが、通信分野での好機はドイツの方が多いと思った。
 しかし、ドイツ語ができないため、職探しに苦労したという。単身で移住した彼は、家族のことを語りたがらない。

■ドイツ政府のアドバイザーを目指す?
 新型コロナウイルスの流行のため、ドイツ語習得の計画は遅れたが、今では1日4時間、デリバリーの仕事の前に語学のレッスンを受けている。
 フードデリバリーサービス「リーフェランド」の自転車配達員の時給は最高15ユーロ(約2000円)。月420ユーロ(約5万5000円)の家賃を含め生活費は賄える。
 サダートさんはドイツ移住を決めたことを後悔していない。
 「このチャレンジは短期的。別の仕事を得られるまでだ」と語るサダートさん。毎月1200キロを自転車で走るので体に良いと力説する。
 タリバンの復権とNATO軍のアフガニスタン撤退で、ドイツでの自分の活躍の機会が開かれたのではないかとサダートさんは期待している。
 「現地の実情を説明できるので、アフガニスタンに関してドイツ政府に助言できる。それがアフガン国民にとっても有益だ」と語る。
 タリバンは、人権、特に女性の権利をめぐっては「過去に犯した間違いから何かを学んだはず」だとサダートさんは考えている。
 国際社会に対しては、アフガニスタンを見捨てず経済支援を続けるよう訴えた。
 それから、サダートさんはスマートフォンをチェックした。正午にデリバリーのシフトが始まる。
 「もう行かなければ」と言い、この日1件目の配達のため、雨の中を走り去って行った。【翻訳編集AFPBBNews】

最新動画

最新ニュース

写真特集