2021-07-29 15:15国際

五輪で透ける国際情勢=反差別・紛争、選手胸に―「平和の祭典」、表現の場に

 各国選手が連日、熱い闘いを繰り広げる東京五輪。五輪憲章は「政治的中立」をうたっているが、世界各地から集まった選手の言動からは人種差別や紛争など国際社会が抱える問題が透けて見える。「平和の祭典」はメッセージを発信する場にもなっている。
 24日のサッカー女子、日本対英国戦の試合開始前、両チームの選手は笛の合図でピッチに静かに片膝をついた。片膝をつく行為は人種差別に抗議する意思表示として米英で広く行われているが、日本でのこうしたパフォーマンスは珍しい。
 米ミネソタ州で昨年5月、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫され死亡した事件は、米国だけでなく各国で人種差別に抗議するデモを引き起こした。「反差別」を訴える動きは大きなうねりとなってスポーツ界にも影響を与え、試合前に選手らが片膝をつく行為は米大リーグやプロバスケットボール協会(NBA)などにも広がった。
 英国でも今月、サッカー欧州選手権の決勝でPKを失敗したイングランド代表選手がインターネット交流サイト(SNS)で人種差別的な投稿の標的になり、社会問題化した。日英両チームの「片膝」にはこうした経緯も影響しているとみられ、日本代表主将の熊谷紗希選手は「人種差別を考えるきっかけになった」と語る。
 一方、柔道男子アルジェリア代表のフェティ・ヌリン選手は22日、棄権を表明した。アルジェリアのメディアに対し、「棄権は『パレスチナの大義』のためで、これは私の義務だ。イスラエルが非合法な国家であることを全世界に伝えるためでもある」と説明したという。
 イスラエル軍は5月、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに空爆などを行い、武力衝突に発展。ガザで240人以上が死亡し、国際社会では反イスラエル感情が高まった。ヌリン選手の決断にはイスラエルの選手との試合を回避する狙いがあったとみられる。
 五輪憲章は第50条で「政治的、宗教的、人種的」な宣伝活動の禁止を定めている。だが、選手らの間に「反差別」の動きが強まったことを受け、国際オリンピック委員会(IOC)は東京五輪に向けて新たな指針を発表し、片膝をつくパフォーマンスを事実上容認した。
 新指針によれば、競技会場で取材を受けるミックスゾーンや記者会見、SNS上などで選手は自身の意見を表明できるようになった。競技場で試合前や名前を紹介される間などでも意思の表現が可能となったが、特定の人や国、組織を対象としないことが条件だ。
 国際柔道連盟は、ヌリン選手の行動は五輪憲章に反すると指摘。アルジェリア・オリンピック委員会はヌリン選手の資格認定証を無効とし、コーチと共に帰国させる措置を取った。IOCで各国・地域オリンピック委員会(NOC)を担当するマクラウド部長は27日の記者会見で「こうした問題をいつも懸念し、注視している。五輪憲章の違反があれば、必要な措置を講じる」と断固とした姿勢で対応する方針を示した。 
[時事通信社]

最新動画

最新ニュース

写真特集