2020-10-17 18:07TOPICS

「酪農王国」揺れる農家=廃業急増、コロナ追い打ち―米ウィスコンシン州

トラクターに乗るダリン・ボンルーデンさん=12日、米ウィスコンシン州ウエストビー
トラクターに乗るダリン・ボンルーデンさん=12日、米ウィスコンシン州ウエストビー

 「酪農王国」と呼ばれる米中西部ウィスコンシン州は、大統領選挙で激戦州の一つに数えられる。前回2016年の選挙では、共和党のトランプ氏が僅差で民主党のクリントン氏を上回り、共和党が1984年以来32年ぶりに奪還した。ただ、農場閉鎖の急増や新型コロナウイルスの感染拡大を受け、農家の間では「トランプ離れ」の動きも出ている。政権の継続か交代か。11月3日の投票日が迫る中、揺れる現地を歩いた。
 ◇ホワイトハウスに安定感を
 木々の葉が黄色や紅色に染まり、秋の気配が深まる州西部ウエストビー。錦秋の丘を抜けると、小さな牛舎が見える。約50頭の乳牛を育てる酪農家ダリン・ボンルーデンさん(53)は「ホワイトハウスには安定感が必要だ」と訴える。
 「トランプ大統領が再選されれば、ウィスコンシンの農業は廃れる」。ボンルーデンさんはトランプ氏を「責任感が欠如している」と批判する一方、民主党候補のバイデン前副大統領については「安定感があり、人種差別解消や人種間の経済格差是正に積極的だ」と評価しており、大統領選ではバイデン氏に投票すると明言。「共和党を支持する友人も政権に不満を募らせている」と明かす。
 17年1月のトランプ政権発足以降、州内では2200以上の酪農場が閉鎖。昨年は過去最高の818カ所に上った。中国との貿易戦争などが背景にあり、今年はコロナ禍が経営難に追い打ちを掛けている。
 ◇生乳廃棄、広がる失望
 「前回はワシントンに新しい血が必要と考え、変化を求めてトランプ氏に投票したが、もう一期任せたいとは思わない」。州南部ソークシティの酪農家ミッチ・ブライニグさん(50)は北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」について、「トランプ政権の小さな成功にすぎず、貿易関係が改善したという実感はあまりない」と冷静だ。
 ブライニグさんは4月、コロナ禍に伴うレストランなどでの乳製品需要の急減を受け、初めて生乳の大量廃棄を余儀なくされた。「トランプ政権の初動が適切だったら、今頃は違う結果になっていた」。コロナ対応をめぐる政権批判は厳しい。
 ◇根強い現職支持
 ただ、農家のトランプ氏支持も依然根強い。州内を車で走ると、民家の庭先には「トランプ・ペンス」と共和党支持を明示した看板を数多く目にする。州南西部プラットビルの酪農家トム・ワイゲルさん(56)は「トランプ氏は農家の声に耳を傾けている。今の政権になってから規制緩和が進み、燃料費が安くなった」と語る。
 さらに「中国は新型コロナのワクチンの研究情報などを盗もうとしており、トランプ政権の対中強硬姿勢は支持できる」と主張。「トランプ氏の評価は『B』だが、オバマ前大統領は『D』だ」と力説し、今回もトランプ氏に一票を投じる考えだ。
 コロナ危機の打撃を受けた農家に対する130億ドル(約1兆3700億円)規模の追加支援策の発表の場として、トランプ氏はウィスコンシン州を選んだ。激戦地での支持拡大が狙いとみられるが、州東部のある農家からは「農業票を買収しているようなもの」と冷ややかな声も聞かれた。 

乳牛の世話をするミッチ・ブライニグさん=11日、米ウィスコンシン州ソークシティ
乳牛の世話をするミッチ・ブライニグさん=11日、米ウィスコンシン州ソークシティ

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