2020-05-26 07:14スポーツ

ファンの心つかんだ一打=本拠地開幕戦で満塁弾―松井秀喜、メジャー挑戦の系譜(2)

 2003年3月31日、ブルージェイズの本拠地スカイドーム。松井秀喜は遠征地のカナダ・トロントで米大リーグのデビュー戦を迎えた。ヤンキースの強力打線で5番を任されたのは、期待の表れだった。
 相手の先発は、前年に19勝をマークしたエースの右腕ロイ・ハラデー。一回2死一、三塁の好機に初打席が回り、外角低めの初球を三遊間へ流す適時打を放った。大リーグの投手とシーズンで初めて対戦した1球目に初安打、初打点を挙げても、「打てる球が来たから打っただけ」とひょうひょうとしていた。
 あいさつ代わりの適時打に続き、4月8日にはヤンキースタジアムでの本拠地開幕戦で魅了した。ツインズ戦の五回、前を打つバーニー・ウィリアムズが敬遠されて1死満塁の場面。自分との勝負を選んだジョー・メイズに対し、フルカウントから甘いチェンジアップを右翼席にたたき込んだ。派手な大リーグ初アーチだというのに「いつも通りのアプローチを心掛けた」と、この時も落ち着き払っていた。
 冷静だったのは本人だけ。球場全体が興奮に包まれ、スタンドが揺れた。何食わぬ顔でベースを周回し、ナインに祝福されながらベンチへ戻ると、ジョー・トーリ監督に「みんなが呼んでいるぞ」と促された。はにかんだようにベンチ前に出て、ヘルメットを振って大歓声に応えた。ファンの心をがっちりつかんだ瞬間だった。
 これ以上ない滑り出し。米国でも通用するに違いない。そんな雰囲気になっていた。だが、前途洋々と思われたシーズンは暗転する。それほど甘い世界ではなかった。 
[時事通信社]

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