2019-08-23 09:28World eye

キリンに忍び寄る「静かな絶滅」の脅威

【ロイサバAFP=時事】アフリカ・ケニアに暮らすサンブル人戦士のレサイトンさんにとって、キリンはこれまで単なる狩猟の対象でしかなかった──。サンブルの人々が暮らすケニアの平原では、優雅な大型動物であるキリンはそれほどありふれた存在だったのだ。≪写真はケニア・ライキピアのロイサバ動物保護区で撮影されたキリン≫
 グループの長老のレサイトンさんは杖(つえ)にもたれ、広大なライキピア高原をじっと見つめながら「ライオンと違って、キリンを殺すことに格別の誇りはなかった…(だが)キリン1頭で村全体の1週間以上分の食料にはなった」とAFPに語った。
 だが近年、キリンの数は以前より少なくなっている。ケニアだけではない。世界で最も背の高い哺乳類であるキリンの個体数がアフリカ全体で、静かに、そして急激に減少しているのだ。
 国際自然保護連合(IUCN)が入手した統計データによると、アフリカ大陸全体のキリンの個体数は、1985年~2015年の30年間で約40%減少し、その数が10万頭を下回ったという。
 だが、ゾウ、ライオン、サイなどの個体群の壊滅的崩壊に対して行動を求める呼びかけが行われたのとは異なり、キリンの危機的状況にはあまり関心が向けられてこなかった。
 IUCNのキリンとオカピの専門部会で共同議長を務めるジュリアン・フェネシー氏は、「キリンは大きな動物で、国立公園や保護区内で容易に見ることができる。このことが、この動物種が良好な状態にあるという間違った印象を与えてきた可能性がある」と話す。
 キリン個体数の減少率は、アフリカ中部と東部地域で特に高い。その背景にあるのは、密猟、生息地の破壊、紛争といったさまざまな要因だ。
 IUCNによると、ケニア、ソマリア、エチオピアなどでは、アミメキリンの個体数が2018年までの30年間に約60%減少したという。より希少な亜種であるヌビアキリンは同期間、97%という悲劇的な減少に見舞われ、絶滅の危機に追いやられてしまった。他方で、アフリカ中部に生息する別の亜種コルドファンキリンは85%の減少に直面している。
 2010年のIUCNのレッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物種のリスト)では、キリンは「低危険種」と位置づけられていた。だが、その6年後には絶滅危惧種の1段階下の「危急種」となり、多くの人を驚かせた。
 サンディエゴ動物園保全研究所の研究コーディネーター、ジェナ・ステーシー・ドウズ氏は、「こうしたことから、キリンをめぐっては静かな絶滅の脅威が語られている」と話す。
 ■2004年に初の長期調査
 しかし、他の動物と同様にキリンを保護の対象とする目的で進められている世界的な取り組みにおいては、専門家らの意見が割れてしまっている。
 ケニアを含むアフリカの6か国は、国連の「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」の下でキリンの国際取引を規制するよう強く求めている。スイス・ジュネーブでは8月17日から28日まで、ワシントン条約の締約国会議が開かれている。
 だが反対派は、野生生物の国際取引がキリンの個体数減少の原因となっているという証拠はほとんど存在しないと主張する。信頼できるデータがないことが、キリンを保護する取り組みを長い間妨げているのだ。
 キリンを対象とする長期調査は2004年になるまで行われなかった──。そう指摘するのは、国際保護団体「キリン保全財団」のアーサー・ムネザ氏だ。同氏は、キリンに関するデータは、他の野生生物をターゲットとする研究者らが補足として収集するケースが多いとしながら、「信頼できるデータがなければ、適切な保護対策を講じることがさらに難しくなる」と話す。
 さらに、合法取引とキリンの個体数減少との関連性についてはまだはっきりと分かっていないことを指摘しつつ、「国際取引の規模とそれがキリンの個体数に及ぼす影響を明らかにするための調査を実施することが最初のステップになるはずだ」と主張した。【翻訳編集AFPBBNews】

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