2019-02-20 13:17World eye

IS家族の帰国問題、先駆者ロシアの対応

【モスクワAFP=時事】シリアでイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の壊滅が近付く中、IS戦闘員の家族の処遇が各国で課題となり始めている。ロシアは既に、ロシア人のIS構成員の子どもの受け入れを組織的に行っており、この問題における先駆者と見なされている。≪写真は資料写真≫
 ISが樹立を宣言した「カリフ制国家」に行った女性や、大半が現地生まれのその子どもたちの帰国の可能性は、ロシアでも議論となっているが、一部の治安当局者は彼らを潜在的脅威と見なしている。
 2月上旬には、4~13歳の子ども27人が、イラクからモスクワに空路で帰国した。ISに加わったロシア人の大部分は、イスラム教徒が大多数を占めるロシア南部北カフカス連邦管区の出身だ。帰国した子どもたちは、北カフカスで暮らす親戚に引き渡されることになっている。
 また、昨年12月下旬には、IS構成員の子ども30人が帰国している。
 IS構成員の家族の帰国においては、チェチェン共和国の指導者ラムザン・カディロフ首長の顧問を務めるヘダ・サラトバ氏が中心的役割を果たしているとされている。サラトバ氏は「子どもたちは学校や幼稚園に通っている。ボランティアが対応に当たり、子どもたちが経験したことや洗脳を受けたことについて説明している」と語った。
 IS家族の人数に関するロシア当局の発表は、矛盾することも多い。サラトバ氏は、約200人の子どもがロシアに帰国したが、いまだ1400人近くがイラクやシリアに残っていると話す。
 ロシア政府の保護を長年受け、広い人脈を持つことで知られるカディロフ氏は2017年、IS戦闘員の子どもを帰国させる取り組みを開始した。その対外交渉は、シリアのアレッポ出身のチェチェン議員ジヤド・サブサビ氏が主に担っている。
■プーチン氏も支持
 ウラジーミル・プーチン大統領は2017年末、カディロフ氏を支持し、子どもたちを帰国させる取り組みは「尊敬に値する正しい行いだ」とし、支援を約束した。
 プーチン氏は、ロシアがシリアへの軍事介入を開始した2015年当時は、IS戦闘員がロシアに戻って来る前に殺す必要があると介入を正当化していた。
 ロシアの一部地域では、IS戦闘員のための更生プログラムが実施されているが、全国的に広がることはなかった。シリアやイラクから帰国した若者が出頭すると、厳しい刑罰が科せられる。
 ロシア最高裁判所は今月、19歳の学生だった時にシリアに渡り、IS支配地域で6か月間、調理師や運転手として働いた経験がある若者に対し、16年の実刑判決を言い渡した。
■守られない恩赦の約束
 ロシアとイラクの間に身柄引き渡し協定がないことも、IS戦闘員の妻たちの帰国を難しくしている理由の一つに挙げられる。妻たちはイラクで実刑判決を受け、終身刑を言い渡されることもあるという。
 だが、巨大な権限を持つロシアの治安当局は、成人に達したロシア人が帰国することに消極的だ。
 連邦保安局(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ長官は昨年11月、紛争地帯にいる女性とその子どもの多くは、ISによって自爆テロの実行犯や勧誘員として利用されていると指摘した。
 「妻たちの多くが、クルド人から自由を買い、最終的には何らかの方法で帰国することになると予測しており、FSBは彼らを危険な存在と見なしている」
 ISはロシアの法律で違法団体とされており、ISとのいかなる関係も犯罪と見なされる。
 カフカス地方に特化したニュースサイト「コーカシアン・ノット」のグリゴリー・シュベドフ氏は、「恩赦のようなものを約束される人も多いが、実現することはない」「彼らは裁判にかけられるが、罪状はでっち上げのことも、事実のこともある」と指摘する。
 昨年シリアから故郷のダゲスタンに戻った女性2人は、帰国後すぐに禁錮8年の有罪判決を受けた。だが、裁判所は最終的に、子どもたちが大きくなるまで刑の執行を猶予する決定を下している。
 一方、「カリフ制国家」で育った子どもは、なじみの薄いロシアでの生活に慣れるのに苦労している。
 ロシア当局は、子どもたちを親戚の手に委ねることで、イスラム過激派が古くから存在するカフカス地方でも、子どもたちが成長した時に過激派になる危険を最小限に抑えることができると期待している。【翻訳編集AFPBBNews】

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