非常戒厳の違憲性焦点=強気の尹氏、憲法裁で闘争へ―韓国
【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領の弾劾訴追案が可決されたことを受け、憲法裁判所が半年以内に弾劾罷免の妥当性を判断する。3日に宣言された「非常戒厳」に重大な違憲性があったかが焦点。尹氏は「堂々と立ち向かう」と強気の姿勢を示し、職務復帰を目指して全面的に争う方針だ。
憲法裁は14日、弾劾訴追議決書を受理したとして「迅速で公正な裁判を行う」と表明。16日午前(日本時間同)に裁判官会議を招集し、今後の日程を協議すると説明した。
過去に弾劾訴追された大統領2人の事例から、決定までに最低でも2カ月は要するとみられている。2016年に弾劾訴追された朴槿恵元大統領は約3カ月後に罷免された一方、04年の盧武鉉元大統領の弾劾訴追は約2カ月後に棄却された。内乱容疑で検察や警察などの捜査対象になる尹氏が起訴された場合は審判を停止できると法律に定められており、長期化する可能性もある。
憲法裁の裁判官の定数は9人だが、在籍は6人。うち4人は尹政権発足後に任命した。欠員があっても審理は可能で、現状では弾劾に全員の賛成が必要。尹氏が強気でいられる理由だ。空席の裁判官3人は国会が推薦でき、野党は任命手続きを急ぐ。
審判では戒厳下の一連の動きに国会の権限行使を妨げる目的があったかが争点になりそうだ。憲法77条は「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」に非常戒厳の宣言を認めるが、国会への遅滞ない通告を義務付け、国会決議があれば解除すると定める。
今回可決された弾劾訴追案は、宣言後に警察が国会を封鎖し、軍が議事堂に進入して解除の決議の妨害を試みたと指摘。戒厳の国会への通告はなく、一切の政治活動を禁止する布告も出されており、「重大な憲法違反があった」と訴える。一方、尹氏は兵士の投入について「小規模で、秩序維持のためだった」と反論している。
北朝鮮による攻撃の兆候などは認められておらず、弾劾訴追案は「非常戒厳の要件に欠けていた」とも主張。戦争に準ずる非常事態が存在したかも議論になる。
また、尹氏は戒厳宣言について、高度な政治的判断の「統治行為だ」と強調するが、1997年の最高裁判決は戒厳宣言も法令違反があれば司法審査の対象になると断じている。
憲法裁の決定には世論の動向も影響を与えるとされる。尹氏は「決して諦めない」と表明し、保守層を中心とした国民の支持に望みをつなぐ。
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