北朝鮮、派兵で「実利」期待=ロシアの見返りに韓国危機感
【ソウル時事】ウクライナ当局によると、侵攻を支援するためロシア東部で訓練を受けた北朝鮮兵士の一部が前線に移動した。金正恩朝鮮労働党総書記は、軍の実戦経験の獲得と共に、ロシアから軍事技術や経済的対価を得られると考えているもようだ。韓国は、ロシアから北朝鮮への見返りが「安全保障上の重大な脅威になる」と危機感を募らせている。
韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は北朝鮮による派兵の規模が12月ごろに約1万人に達すると予想。「暴風軍団」と呼ばれる特殊部隊をロシアに派遣したとみている。韓国メディアによれば、朝鮮半島有事初期に韓国に潜入して、主要施設を攻撃し、在韓米国人を人質に取る訓練を受けた精鋭部隊とされる。
韓国大統領府高官は、北朝鮮がロシアから核・ミサイル開発や軍事偵察衛星打ち上げ、老朽化した通常兵器の「現代化」の支援を期待していると指摘した。また、韓国メディアによると、国情院は、北朝鮮がロシアから兵士1人当たり月2000ドル(約30万円)ほどを得るとの見方を示す。北朝鮮の一般的な月収の数十倍に上る破格と言え、制裁やコロナ禍での国境封鎖で外貨収入が減った北朝鮮にとり大きなメリットとなる。
ただ、北朝鮮は朝鮮戦争(1950~53年)以降、大規模な地上戦力の派兵はなく、実戦能力は落ちているとみられる。さらに、意思疎通に困難が伴う他国の指揮系統に入る。国情院によると、北朝鮮兵の軍事訓練に参加したロシアの教官は「兵士の体力と士気は優れているが、無人機攻撃など現代戦への理解が足りず、戦線に投入されれば多数の死者が出る」と予想した。実際に死傷者が出れば北朝鮮内に動揺が広がる可能性もある。
北朝鮮の軍事力強化を懸念する韓国の尹錫悦大統領は24日、「ウクライナを段階的に支援し、朝鮮半島の安保上必要な措置を取る」と表明。ウクライナへの殺傷兵器の直接供給も「北朝鮮軍の活動に応じて柔軟に検討する」と警告した。
韓国大統領府高官は、ウクライナへの防御用兵器から始め、最終的に攻撃用兵器の支援も検討する方針を示す。戦闘機やミサイルを迎撃する韓国製地対空ミサイル「天弓」や砲弾の供与が選択肢にあると指摘される。
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