新証拠、「有罪根拠」覆す=知人らの供述、信用性否定―検察側開示で・福井事件再審決定
前川彰司さんの再審開始を認めた名古屋高裁金沢支部決定は、有罪の根拠とされた知人らの供述について「捜査機関による不当な誘導などで形成された疑いが払拭できない」として信用性を否定した。第2次請求審で検察側が初めて開示した捜査報告書などの証拠は、当初から明らかになっていれば確定判決の判断に影響したとみられ、「到底容認できない」と検察側を厳しく非難した。
事件では、指紋やDNA型など犯人に直結する物証が見つからなかった。確定判決は「前川さんの体や服に血が付いているのを見た」などとする知人らの供述が「大筋で一致している」として信用性を認め、有罪の根拠とした。
同支部は、新旧証拠を基に各供述を検討した。まず、知人男性が「事件当夜に見た」というテレビ番組は、起訴後の捜査でその日に放送されていなかったことが判明したと指摘。「供述の信用性に重大な疑問を生じさせる」とした上で、誤りを明らかにせず公判を続けた検察官に対し「不誠実で罪深い不正と言わざるを得ない」と批判した。
この男性は第2次請求審で、控訴審での証言後に取り調べを担当した警察官から結婚祝いをもらったと明かした。決定は「捜査段階の供述調書通りに証言した謝礼の意味合いが込められていたと見なされても仕方がない」とした。
勾留中、最初に前川さんの関与に言及した知人男性についても、「自らの刑事事件で有利な量刑を得ようと、うその供述をした」と判断。「警察は供述を引き出すため、面会や飲食などに関して通常では考えられないような優遇を認めており、不当な利益供与と言うほかない」と指弾した。
その上で、犯人の検挙や立件に執着する警察官らが、男性の供述にすがりつくようにして他の知人らを誘導するなどし、虚偽の供述を得た可能性があると指摘。「確定判決のように知人らの供述の信用性を認めることは、正義に反し許されない」と断じた。
[時事通信社]
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