岸田首相「制限時間なし」で面会=40分超過、原告らに頭下げ―強制不妊訴訟
岸田文雄首相は17日、旧優生保護法に基づく強制不妊訴訟の原告らと首相官邸で向き合った。事実上の「制限時間なし」で臨み、想定していた1時間の面会は1時間40分に及んだ。首相は旧法を執行していた政府の代表として真摯(しんし)に対応する姿勢を強調した。
「私自らお目にかかり、反省とおわびの言葉を直接お伝えしたいとの思いから本日の面会とした」。首相は冒頭、こう切り出して陳謝。官邸に集まった原告らに、二度、深々と頭を下げた。
最高裁が旧法を違憲と判断した3日、首相は原告と面会すると表明。官邸関係者は「首相はできるだけ早くと思っていた」と明かした。開催中の太平洋の国・地域との首脳会議「太平洋・島サミット」の日程を縫って時間を確保した。
首相周辺は「目安の時間は設けるが、制限せずに話を聞く」と事前に説明。面会は報道関係者にすべて公開され、首相は強制不妊手術の経験や再発防止を訴える原告らの声に、険しい顔で耳を傾けた。
5月に熊本県で行われた水俣病被害者団体と伊藤信太郎環境相との懇談では、環境省職員がマイクを切って発言を遮ったことが問題となった。政府関係者は今回の面会と「関係している」と認めた。
旧法は議員立法で成立した経緯もあり、補償のための関連法案は与野党が具体化を急いでいる。首相は面会で、最高裁判決が「許されない」と断じた国による除斥期間適用の主張撤回を表明。「政府の権限で可能なこと」(官邸幹部)を打ち出すことにこだわった。
首相は新たな補償の仕組みを設け、訴訟を起こしていない被害者や配偶者も対象とし、十分な賠償額を確保する考えを強調した。「皆さまの苦難、苦痛に深く謝罪申し上げる」と締めくくった後、15分にわたって発言者一人一人と握手し、言葉を交わした。
[時事通信社]
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