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夢から悪夢へ…アフガンの「小さなメッシ」、タリバンに追われ避難民に

2018-12-07 15:22


【カブールAFP=時事】ポリ袋で手作りしたサッカー・アルゼンチン代表リオネル・メッシ選手のユニホームを着た姿で世界を感動させ、憧れのメッシ選手と対面する夢もかなえたアフガニスタンの少年、ムルタザ・アフマディ君(7)が、旧支配勢力タリバンに追われて家族と共に避難民生活を送っていることが分かった。≪写真はアフガニスタン・ガズニ州のジャゴリ地区で、サッカー・アルゼンチン代表リオネル・メッシ選手のポリ袋ユニホームを披露するムルタザ・アフマディ君、家族提供≫
ムルタザ君は5歳だった2016年、青と白の縦じま模様のポリ袋にメッシ選手の名前と背番号10をフェルトペンで手書きした兄の手製のユニホームを着た写真が「小さなメッシ」としてソーシャルサイト上で話題を呼び、メディアでも大きく取り上げられた。
「メッシ愛」にあふれたこの写真は、メッシ選手本人の目にも留まった。メッシ選手は自身が親善大使を務める国連児童基金(ユニセフ)を通じ、ムルタザ君に直筆サイン入りのユニホームとサッカーボールを贈呈。さらに同年、カタールで行われたFCバルセロナの親善試合でムルタザ君は、選手入場の際にメッシ選手と手をつないでピッチに登場し、憧れのスーパースターとの共演を果たした。
しかし、ムルタザ君は今、首都カブールで数千人の避難民の一人として、悪夢の中に暮らしている。
ムルタザ君の自宅がある南東部ガズニ州はこれまで、内戦状態のアフガン国内では安全な地域とされていた。だが、11月にタリバンがガズニ州で攻勢を開始。戦闘が激化して多くの人々が逃げ出す中、一家も同月中に同州ジャゴリ地区の自宅を捨てた。
ムルタザ君一家は少数民族ハザラ人だ。ハザラ人はイスラム教シーア派が多数を占め、今回の攻勢でもスンニ派のタリバンの標的となっている。
カブールでAFPの取材に応じた母親のシャフィカさんは、夜中に銃声が聞こえたため「取るものも取りあえず、身一つで」自宅から逃げ出したと語った。メッシ選手から贈られたユニホームとボールも、持って来られなかったという。
タリバンがムルタザ君を名指しで捜していると聞き、一家の恐怖は募るばかりだ。「ムルタザを捕まえたら、バラバラに切断してやると(タリバンは)言っている」とシャフィカさんはおびえた表情で話した。逃げる道中では、有名になってしまったムルタザ君の顔をスカーフで隠していたという。
■「メッシに会いたい」
国連によると、今回の攻勢で避難民となっているのは最大4000家族。戦闘ではアフガニスタン軍やタリバンだけでなく、民間人にも多数の死者が出ており、目撃者たちはAFPの取材に「純然たる恐怖」だったと証言している。
アフガン治安部隊は既にジャゴリ地区からタリバンを撃退したが、もはや一家の心が安まることはないとシャフィカさん。「タリバンが再び襲って来る可能性は高い。戻るという選択肢はない」
ムルタザ君の知名度が上がってから、一家に注目が集まり、危険を感じることは増えていた。自宅に地元の有力者たちがやってきて「金持ちになったんだろう。メッシにもらった金を寄こせ。さもないと息子を連れていくぞ」と脅されたり、夜間に見知らぬ男たちがうろついて一家の様子をうかがってはどこかに電話したりしていたため、ムルタザ君には家の外で他の子たちと遊ばないよう注意していたという。
実は、一家は2016年にもパキスタンに一時避難していた。「どこか安全な国」での難民認定を求めたが、所持金が尽き、泣く泣くジャゴリ地区の自宅に戻ったという。今は、父親がジャゴリ地区に残って畑仕事を続ける一方、ムルタザ君たちはカブールで窮屈な部屋を借り、食べ物や水、衛生用品にも事欠く不安定な避難民生活を送っている。
ムルタザ君にポリ袋ユニホームを作ってあげた兄ホマユン君は、カブールでも弟のことが周囲に知られたら「悪いことが起きるんじゃないかと心配だ」と話した。
ムルタザ君本人はというと、メッシ選手からプレゼントされたサッカーボールとユニホームが手元にないのが寂しいという。「(ボールとユニホームを)取り戻したい。そうすれば遊べるのに」
「メッシ選手に会いたいな」とムルタザ君は言った。「会ったら、『サラーム』(イスラム教徒のあいさつ)と言ってから『調子はどう?』って聞くんだ。そうしたらメッシ選手はありがとう、無事だよって答える。それから2人でピッチに行って、メッシ選手のプレーを見るんだ」 【翻訳編集AFPBBNews】

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