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オバマ氏抱擁の被爆者「平和のため生涯懸けた」=米兵遺族に最期伝える

2018-08-04 14:29

広島は、6日に73回目の原爆忌を迎える。投下された原爆は、多くの市民と共に外国人の命をも奪った。被爆死した米兵捕虜の実態を明らかにした広島市の歴史研究家森重昭さん(81)は「遺族が故人のことを知りたいのは日本人も米国人も一緒。少しでも平和の役に立てばと全生涯を懸けた」と40年にわたる研究生活を振り返った。
森さんは8歳の時、爆心地から約2.5キロの地点で被爆した。通っていた済美国民学校では、校舎にいた児童らが全員犠牲になったが、転校していたため生き残った。戦後、校長の手記を読み、敷地内で米兵捕虜の遺体が見つかったと知ったことが、研究を始めたきっかけだ。
資料収集や聞き取りで、12人の捕虜を特定。同じ姓の人に、拙い英語で片っ端から国際電話をかけ、遺族を探し当てた。米国政府は「戦闘中行方不明になった」としか説明しておらず、詳しい死亡場所や状況を伝えると、「敵国なのによく調べてくれた」と感謝された。
「金目的か」と怪しまれることもあったが、手紙のやりとりを重ね信用を得たという。その後も、他の外国人被爆者の研究を続けた。
2016年5月のオバマ米大統領(当時)の広島訪問では、米側が森さんを式典に招待。涙を流す森さんをオバマ氏が抱き締める様子は、世界に報道された。
森さんは今年5月、念願の初訪米を果たし、ニューヨークの国連本部やサンフランシスコで開かれた、自身のドキュメンタリー映画の上映会に出席した。「観客は全員スタンディングオベーション。日本よりもすごい反響で感激した」
滞在中、ケネディ元大統領に関する資料が集まる「ケネディ・ライブラリー」も訪問。世界を核戦争の淵に立たせたキューバ危機後、中南米を中心に非核兵器地帯を設けたように、「東アジア全体から核を永久に除去する条約を関係国が結ぶべきだ」と訴える。
森さんは、6月の米朝首脳会談を高く評価し、「(非核化が)案外うまくいくチャンスが訪れるかもしれない」と期待した。「今後は、長崎で被爆したオランダ人捕虜を調査し、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館への遺影登録を進めたい」と意欲を燃やしている。
[時事通信社]

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