特集


殺人を肯定、教義過激化=神秘体験で若者集める―「グル」崇拝強要・松本死刑囚

2018-07-06 09:34

ヨガサークルから宗教団体に姿を変え、テロ集団に変貌したオウム真理教。教団を率いた松本智津夫死刑囚(63)は、体を宙に浮かせる「空中浮揚」など「神秘体験」を強調し、若者を中心に信者を増やした。指導者を意味する「グル」とあがめさせ、教祖に陶酔する信者は、殺人すら肯定する教義を受け入れていった。
松本死刑囚は1955年3月、熊本県八代市で生まれた。左目がほとんど見えず、右目も弱視だったため県内の全寮制盲学校に通った。卒業後に上京し、結婚。千葉県船橋市で鍼灸(しんきゅう)院などを開いたが、医薬品の無許可製造で逮捕され、廃業した。
84年にヨガサークル「オウム神仙の会」を設立。空中浮揚の写真を雑誌に載せ「誰でも修行すれば超能力者になれる」と勧誘した。次第に宗教色を強め、86年には「ヒマラヤで最終解脱した」と宣言。出家制度を創設し、教団施設での集団生活を開始した。
87年には「オウム真理教」と改称。周囲に「グル」と呼ばせ、修行で成就した弟子には宗教名「ホーリーネーム」を与えて幹部とし、一般信者と差別化を図った。信者数は最盛期で1万人に上ったとされる。
「インドのヨガ行者のよう」。教団草創期に入信した元信者は、質素な身なりで熱心に指導する松本死刑囚に引き寄せられた。「相手の話を聞き、優しく穏やかだった」と感じた信者もいる。
一方で、密教などをベースにした独自の教義は徐々に過激化した。87年には「グルが殺せと言う時には、相手は死ぬ時期に来ている。弟子に殺させることによって、相手をポアさせる」と説法し、自らの指示であれば、殺人も正当化されると教えた。さらには「ハルマゲドン(人類最終戦争)」を予言して不安をあおり、自分を「救済者」と説くようになった。
側近だった1人は松本死刑囚を「人間ではない化け物のようなもの。殺される、ではなくもっと怖い存在」と表現する。恐怖を内包した信仰に支配されたこの側近は、命じられるままサリンの製造に手を染め、後に死刑判決を受けた。
[時事通信社]

その他 特集記事